"登記簿に残った妻の名前" 第3話
もう、これは夫婦の話しいではありません。のの鍵を勝に持ちし、を連れて入り、そこを居として語っている。秀は、自分が何をしているのか本当に分かっていないのだと、子は悟りました。
「今はお帰りください」
「子、お……」
「勝に鍵を持ちしたことも、しずく町のに入ったことも、今ここで聞きました。これ以は話しません」
美咲は唇を噛み、秀は満そうに顔を歪めました。それでも子は歩もがりませんでした。やがて2は、何かを言い残すような顔をしながら玄関をていきました。
ドアを閉めたあと、子はしばらくそのにっていました。元がえていることに気づき、ゆっくり台所へ戻りました。そして引きしから学ノートを取りしました。
付。刻。美咲の言葉。秀が仏壇から鍵を持ちした事実。しずく町のに入ったこと。
子はペンを握り、震えない字で1つずつきました。りではなく、記録として。泣くためではなく、自分を守るために。
第章 子が証拠を集め始めた
翌朝、秀は何事もなかったように噌汁をすすっていました。昨夜のことなど、もう片付いた話だとっている顔でした。子は台所にち、鍋の蓋を閉めながら、その横顔を静かに見ていました。
「子、昨はし言い過ぎた」
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秀は箸を置き、珍しく柔らかい声をしました。けれど、その声には謝罪よりも、くを収めたいという焦りが滲んでいました。
「だが、分かってくれ。美咲もなんだ」
子は噌汁の椀を持ったまま聞き返しました。
「なら、なぜ私のに来たの?」
「おのじゃない。俺たち夫婦のだ」
「しずく町のもそうっているの?」
「当たりだろう。俺がをすんだから」
子はさくうなずきました。けれど、それは納得ではありません。確認でした。言葉を引きし、事実として記録するためのうなずきでした。
「付はいくら払ったの?」
「200万円だ。共座からし借りてるだけだ」
「借りたのね」
「細かいな。で返せばいいだろう」
子はそれ以、卓では問い詰めませんでした。秀がかけるのを待ち、玄関の扉が閉まる音を聞いてから、すぐに通帳をきました。該当する付。振込先。額。すべてコピーしました。
学ノートには、昨の記録がすでに残っています。美咲がしずく町のに入ったこと。秀が仏壇から鍵を持ちしたこと。今、共座から200万円をしたと秀自が言ったこと。子はそれらを並べるようにきしました。
夕方、秀はリビングで話をしていました。子は台所で洗い物をしながら、その声が廊に漏れてくるのを聞きました。
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「ああ、美咲、丈夫だ。子はそのうち折れる。登記なんかで変えればいい」
子のが瞬だけ止まりました。胸は痛みました。けれどは震えませんでした。彼女は静かにスマートフォンの録音を止め、保しました。
夜、秀が戻ってくると、子はいつものように卓をえました。噌汁を置き、ご飯をよそい、必以のことは言いませんでした。秀はその沈黙が気に入らなかったのか、し疑うような目を向けました。
「お、最妙に静かだな」
子は箸を置きました。
「忘れないようにしているだけよ」
「何をだ」
「あなたが言ったことを」
秀はで笑いました。
「そんなもの、いちいち覚えてどうする」
子は返事をしませんでした。代わりに、部へ戻り、学ノートをきました。そこには秀の言葉が1ずつ積もっていました。
ほど軽く見られた言葉が、いつかい証拠になることを、秀だけがまだらなかったのです。
第章 ゆかが登記を確認した
昼、娘のゆかが実に来ました。子が玄関をけた瞬、ゆかは笑いませんでした。母の顔を見ただけで、何かが起きていると分かったようでした。
「お母さん、顔が悪い」
「丈夫よ。し寝なだけ」
「そういうほど丈夫じゃないの。何があったか、最初から見せて」
子はし迷いました。
親の揉め事に子どもを巻き込みたくないといういはありました。けれど、すでに秀は子1の活だけでなく、や共のおにもをしていました。
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