みかん小説
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"年金九万円の同窓会" 第4話

覚えている顔。

もう曖昧になった顔。

そして、宮原理恵の顔。

私は起きがり、台所でお茶を入れた。

しだけパンをべる。

空腹でくのは嫌だった。

でも、べすぎる気にもなれなかった。

からしておいたに袖を通す。

濃い青の着に、暗めのズボン。

しくはない。

けれど、丁寧に入れしたものだった。

鏡ので襟元をえ、髪を撫でる。

若く見せようとはわなかった。

ただ、うつむかずに済む程度にはえておきたかった。

に乗ると、窓ガラスに自分の姿が映った。

周りには、綺麗なを着たたちがいる。

スーツ姿の男性。

るいワンピースの女性。

そので私は、毎朝着ている清掃の制した。

剤の匂い。

汗の染みた襟元。

ゴム袋の触。

恥ずかしいとったわけではない。

ただ、き来しているつの世界の差が、急にはっきり見えた。

横浜駅に着く。

のホテルは、駅からかった。

きなガラス扉。

井。

磨かれた

私は入で数秒ち止まり、く息を吸った。

に入ると、スタッフが丁寧にげる。

招待状を見せると、の階へ案内された。

エレベーターので、私はバッグの持ちを握りしめた。

の扉がく。

ざわめきが気に広がった。

笑い声。

を呼ぶ声。

「久しぶり」

「変わらないね」

そんな言葉があちこちから聞こえる。

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私は入ったまま、瞬帰りたくなった。

違いだとった。

でも、ここまで来たのだ。

私は歩踏みした。

誰かが私を見つけた。

「あきこ?」

その声に、私は顔をげた。

かがこちらを振り向く。

数秒の沈黙の、懐かしい名を呼ぶ声がなった。

をしてくれる

会釈する

から先まで私を見る

ではない。

ただの好奇だ。

それでもし胸がくなる。

その、会の奥から理恵が歩いてきた。

姿勢がよく、品なワンピースがよく似っていた。

けれど、笑顔は昔のままだった。

「あきこ。本当に来てくれたのね」

その声には、驚きではなくびがあった。

私はようやく息を吐いた。

「久しぶり」

理恵は私のを取った。

そのは温かかった。

席に案内され、私は周りの話を聞いた。

の話。

の話。

孫の写真。

病院の話。

私は笑って頷いた。

自分からくは話さなかった。

でも、逃げなかった。

料理が運ばれてきた。

さく美しい皿を、私はゆっくりわった。

節約を気にしてではない。

この瞬を、自分のものとしてじたかった。

ふと自分のを見る。

価な指輪も、綺麗にえた爪もない。

けれどこのは、私を今ここまで連れてきた。

働き、育て、耐えて、きてきただ。

そうったしだけ肩の力が抜けた。

私は違った所に来たのではない。

ただ、違うを歩いたたちのに、今の私として座っているだけだった。

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事がひと段落すると、会の空気はしずつ変わっていった。

最初は況報告や自話のように聞こえていた会話も、が経つにつれて静かな本音へと変わっていく。

私は理恵の隣に座り、きな窓の向こうに見える夕方の景を眺めていた。

横浜のは柔らかなに包まれ、くのビル群が淡く輝いている。

しばらく沈黙が続いた、理恵がさく息を吐いた。

そして私の方へ顔を向ける。

「あきこ、疲れてない?」

私は首を横に振った。

丈夫」

理恵はしたように微笑んだ。

だが、その笑顔の奥に何かたいものが隠れていることに私は気づいた。

昔からの表を見る仕事をしていたわけではない。

それでもで、が本当に笑っていると、無理に笑っているの違いくらいは分かるようになっていた。

理恵はグラスのみ、線を落とした。

「実はね」

そう言ってを置く。

「今来るかどうか、私も迷ったの」

私は驚いて理恵を見た。

彼女は昔から自信に満ちていた。

学へ学し、都会で暮らし、理を歩いてきたように見えていた。

だから迷う理由などないとっていた。

理恵は静かに続けた。

「夫がね、最しおかしいの」

私は黙ってを傾けた。

「認症の初期症状だって言われた」

その言葉に胸がさく揺れた。

理恵は笑おうとした。

しかし、その笑顔は途で崩れてしまった。

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