"128万円の断絶通知" 第4話
そんな覚だけがあった。
この選択が正しかったのかどうか、今でもわからない。
ただつ言えるのは、あのまま何もらずにいるよりは、ずっと良かったということだった。
私は振り返らなかった。
これから先も、きっと振り返らないとう。
夕暮れのが頬を撫でた。
私はゆっくりを向き、そのまま歩き続けた。
退院して、私は久しぶりに自宅の窓をけた。
のが静かにカーテンを揺らす。
流し台には、退院に洗ったまま伏せておいた湯みがそのまま並んでいた。
蔵庫をける。
豆腐と卵、それからさな漬物の容器。
分の活は静かだった。
けれど、その静けさはっていたほど苦しくなかった。
私は鍋に湯を沸かし、さな噌汁を作った。
噌を溶く湯気を見ながら、ふとこの数のことをいす。
美咲から話が来れば、私はすぐに支度をしていた。
「里奈がをした」
「保育園が休み」
「今だけお願い」
そう言われれば、断れなかった。
蔵庫が空なら材を買いし、米が減っていればキロの袋を運んだ。
頼まれなくても、私はやっていた。
母親だから。
祖母だから。
そうっていた。
けれど今になってう。
あれは本当に相のためだけだったのだろうか。
必とされていることで、自分の居所を確認したかっただけなのかもしれない。
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噌汁を椀によそった、スマートフォンが震えた。
画面には「里奈」と表示されていた。
私は瞬だけ指を止めた。
それから通話ボタンを押す。
「もしもし」
『おばあちゃん?』
里奈の声だった。
しにかかった、まだ幼さの残る声。
「どうしたの?」
『ママ、ずっと泣いてる』
私は黙って聞いていた。
『パパ、いないの』
さな声だった。
『おばあちゃん、もう来ないの?』
その言葉に、胸の奥がわずかに揺れた。
私は目を閉じた。
こうとえばける。
今からに乗れば、もかからない。
玄関をけて、いつものように「丈夫よ」と言うこともできる。
けれど、それをすれば、きっと全部が元に戻る。
曖昧なまま、また同じことを繰り返す。
私は静かに息を吐いた。
「里奈」
『うん』
「おばあちゃんはね、しお休みするの」
話の向こうで、さく息をむ音がした。
「でも、里奈のことは好きよ」
私はゆっくり言葉を選んだ。
「だからね、自分のことをちゃんと事にしてね」
しばらく沈黙が続いた。
やがて里奈は、さな声で言った。
『……うん』
話が切れた、私はしばらくけなかった。
窓のでは、夕方のがしずつくなっていく。
私は噌汁をんだ。
しだった。
けれど、その温かさだけは確かだった。
それから週、美咲が突然に来た。
インターホンが鳴った、私はすぐにはなかった。
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モニターを見る。
そこには、目を赤くした美咲がっていた。
私は静かに玄関をけた。
美咲は俯いたまま、さくをげた。
「しだけ……話せる?」
私は何も言わず、横へ避けた。
部に入った美咲は、どこか落ち着かない様子で周囲を見ていた。
このに来るのは久しぶりだった。
以は毎週のように来ていたのに、いつからかがのいていた。
私は湯を沸かし、つの湯みにお茶を注いだ。
テーブルを挟んで向かいう。
しばらく沈黙が続いた。
先にをいたのは美咲だった。
「……ごめんなさい」
その声は掠れていた。
私は黙って聞いていた。
「私、ずっとお母さんに腹をててた」
美咲は俯いたまま続ける。
「通帳を管理されたことも、結婚を反対されたことも、ずっと許せなかった」
私はさく目を伏せた。
「だから、甘えてたんだとう」
美咲は唇を噛んだ。
「お母さんなら、何しても許してくれるって」
私は何も言わなかった。
言い訳をする気にはなれなかった。
、私は確かに娘を縛っていた。
それは事実だった。
「でも」
美咲の声が震えた。
「がおを持ちしてたの、本当にらなかった」
涙がテーブルに落ちる。
「気づいてたのかもしれない。でも、見ないふりしてた」
私は静かに湯みにを添えた。
お茶の湯気がゆっくりちる。
「お母さん」
美咲が顔をげた。
「もう回だけ、やり直せないかな」
その言葉を聞いた瞬、私はゆっくり首を横に振った。
美咲の表が固まる。
私は静かに言った。
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