"竹林の黒い水" 第1話
1989の、佐賀県武雄吉にある裕福な農で、失踪事件が起きた。
夜にして姿を消したのは3だった。農の主である佐藤満蔵、その妻の佐藤ひさ子、そして1息子の佐藤修である。
ただ1、に残された嫁の斎藤吉は、交番で泣き崩れながら証言した。
「夫が義両親の庫を奪って、女と逃げたんです」
当のたちは、その言葉を疑わなかった。修は普段から酒とギャンブルで問題を起こし、借取りがに来ることも珍しくなかったからだ。
吉は、逃げた夫と義両親を待ちながら農を守る嫁として、では同された。
そうして12が過ぎた。
2001715の夜け、武雄吉の空には穴がいたようにがり注いだ。は農の傾斜したを削り取り、裏の盤をきく崩した。
翌朝、くの川に赤黒く粘り気のあるが流れ込んだ。たちはをつまみ、役所へ話をかけた。
「ああ、匂いがひどくて暮らせないよ。が真っ黒に変わっているんだ」
役所の環境課の職員3が、靴を履いて農へ向かった。黒いの流れをたどると、崩れた斜面の隙から、真っ黒な液体がごぼごぼと湧きしていた。
職員の1が顔をしかめた。
「さん、これ、ただの排じゃないですよね」
「のじゃ無理だ。すぐに掘削を呼んでくれ」
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午2、い掘削が林へ入り、鉄の爪で砂を掘り返した。
やがて、のから錆びたドラム缶が現れた。職員がで側面を軽く蹴ると、鈍い属音が林に響いた。割れた隙から黒いヘドロがずるずると流れす。
懐灯を向けた職員は、次の瞬、息を止めた。
ドラム缶のからい骨のかけらが転がり落ちた。
「ひ、の骨じゃないか。く警察を呼べ!」
黒い林ので、12眠っていた事件が再びをいた。
通報から1、県警捜査課の黒田刑事が現に到着した。
38歳の黒田は、背がく、張った顎を持つ鋭い目の男だった。からりると、彼はで崩れた農を瞬で見渡した。
「ここからポリスラインを張ってください。誰も入れないように封鎖を」
輩刑事たちが黄いテープをに巻きつける、黒田はい袋をはめ、ドラム缶のに膝をついた。
隙から見えたのは、違いなく骨だった。しかも1つや2つではない。
2、鑑識班が到着した。彼らはさなシャベルで慎にを取り除いた。が傾きかける頃、ドラム缶ののから、無惨な真実が姿を現した。
遺体は2体だった。
骨は複数のドラム缶のに挟み込まれ、廃棄物と絡みっていた。
鑑識員がくつぶやいた。
「遺体をただ埋めたんじゃありません。ドラム缶と混ぜて、廃棄物に見せかけています」
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黒田はを固く結んだ。
遺体のそばから、の指輪が見つかった。内側には「満蔵」と刻まれていた。
黒田はすぐに交番へ連絡した。
「この域で、満蔵という名の失踪届があったか調べてください」
30分、交番から1枚の記録が届いた。
19897、農主の佐藤満蔵と妻のひさ子が失踪。申告者は嫁の斎藤吉。
「12か」
黒田は類を見つめた。
その、農の入から1の女がってきた。40代半に見えるその女は、黄いテープので息を切らした。
「どいてください。私、ここにんでいる者です」
黒田が分証を確認すると、名は斎藤吉だった。
吉は掘り返された面を見るなり、顔をのようにくした。
「義父と義母なのでしょうか」
「まだ確定ではありませんが、その能性がいです」
黒田が答えると、吉は遺体の方へよろよろと歩いた。にまみれた骨を見るなり、を押さえ、そのに崩れ落ちた。
「ああ、お義母様、お義父様、なんてことなの……」
彼女は面を叩いて泣き、次の瞬、目を向いて気を失った。
「119番を呼べ!」
輩が叫んだ。
だが黒田は、倒れる直の吉の目を見逃していなかった。
彼女の瞳は瞬、遺体の所ではなく、面のある点を確認するようにいた。
それはしみに沈む女の線ではなかった。
何かがまだ埋まっている所を確かめるような、くたい線だった。
翌朝、黒田は警察署の机に座り、12の失踪届を広げた。
1989723。斎藤吉が交番に駆け込み、夫と義両親の失踪を訴えた記録だった。
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