"古い風呂敷の遺言" 第1話
「残り物の料理を包んでおいたから、持って帰りなさい」
義母はそう言うと、古びた呂敷包みを私の元へ投げつけた。
がる正の朝だった。
横浜にある義実の居には、親戚たちが集まっていた。
誰もがその面を見ていた。
私は畳のに落ちた呂敷を見つめたまま、すぐにはけなかった。
義母はたい声で続けた。
「末っ子の嫁のくせに、でしゃばるんじゃないわよ」
わずか5分、義母は男の嫁と次男の嫁に級な着物を渡していた。
「うちの派なお嫁さんたち、いつもご苦労さま」
そう言って、2を褒めていた。
その声と、今の声が同じのものとはえなかった。
男の嫁と次男の嫁は、50万円はするであろう着物を抱きしめ、勝ち誇ったように微笑んでいた。
親戚たちは目をそらしたり、元を隠して笑ったりしていた。
私は震えるを伸ばし、呂敷包みを拾いげた。
破れて古びた、まるでゴミのような呂敷だった。
5、認症になった義母を昼夜問わず介護してきた私が受け取ったものは、それだけだった。
「由美、さっさと持って帰らないの?」
義母の声が鋭くんできた。
私はもう耐えられなかった。
唇を噛みしめ、呂敷を胸に抱えたまま玄関へった。
背から親戚たちのひそひそ声が聞こえた。
けれど、もうには入らなかった。
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そのの夜。
に戻った私は、に放りした呂敷包みをしばらく見つめていた。
残り物の料理だけでも確認してから捨てよう。
そうって、結び目にをかけた。
けれどからてきたのは、料理ではなかった。
分い類の束だった。
その瞬、私は息をのんだ。
彼らはらなかった。
あの古い呂敷のに、何が入っていたのかを。
そして、認症だとっていた義母が、この5、何を見ていたのかを。
私の名は由美。
横浜の学病院で護師として働く38歳のワーキングマザーだ。
夫の也と結婚して10になる。
義母と同居を始めたのは5だった。
きっかけは、2019の。
義母が認症と診断されたことだった。
そのらせを聞いた、私は病棟で勤務だった。
夫から話がかかってきた。
「母さんが病院で検査を受けたんだけど、度の認症だと言われたらしい」
話の向こうで、夫の声は震えていた。
私はしばらく言葉を失った。
護師として、認症の患者さんを何も見てきた。
その介護がどれほど変なのりか、誰よりもっていたからだ。
「お義兄さんたちは何て言っているの?」
私が尋ねると、夫はため息をついた。
「兄貴たちは2とも忙しいって」
男は産業でがない。
次男はチェーンの本部を運営していて忙しい。
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その言葉を聞いた瞬、嫌な予がした。
結局、介護の負担は私たちに回ってくる。
そう直した。
数、義実で族会議がかれた。
川崎方面にある築30以の古いマンションだった。
居には、男夫婦と次男夫婦が先に来ていた。
4ともきちんとした装でソファに座っている。
男の嫁が私を見ると、形だけの挨拶をした。
「来たのね」
笑顔はなかった。
夫が慎にをいた。
「母さんをどう見守るか、話しわないと」
しかし、そのの空気は最初から決まっていた。
どう世話をするかではない。
誰に世話を押しつけるか。
その話しいだった。
私が介護施設の話をすと、男は首を横に振った。
「施設はだめだ。母さんがしむ」
夫が交代で預かる案をすと、次男はすぐにを振った。
「うちはが狭い。子どもたちの塾代だけでも変なんだ」
その、男の嫁が私を見た。
「でも由美さんは護師じゃない」
「専なんだから、お義母さんをに見られるんじゃないの?」
胸がたくなった。
護師なのだから当然だろう。
そう言われているのが分かった。
私は夫を見た。
何か言ってくれることを期待した。
しかし夫は俯いたまま黙っていた。
「あの、それなら介護費用は皆さんでしていただけますよね」
私は勇気をして尋ねた。
けれど返ってきた答えはたかった。
「俺たちも余裕がない」
「必なものがあったら、そのに言ってくれ」
結局、義母の介護は私たち夫婦が引き受けることになった。
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