"老人ホームの話を聞いた夜" 第7話
彼らののは、沖縄の楽しいいでいっぱいだった。エメラルドグリーンの、美ら族館、ステーキハウス、何より、うるさい正雄のいない族入らずの解放。
「やっぱりが1番よね。く帰って、ふかふかの布団で寝たいわ」
由美が言うと、健も頷いた。
「俺の斎が恋しいよ」
リムジンバスを乗り継ぎ、見慣れたマンションのエントランスに着いた頃には、すっかりが暮れていた。
15階。
慣れ親しんだ玄関ドアので、健は暗証番号を押した。
ピー。
鳴るはずの錠音ではなく、無質なエラー音が返ってきた。
「番号が違います」
「あれ?」
健は首をかしげ、もう度ゆっくり番号を打ち込んだ。
ピー。
また同じエラー音だった。
「ちょっと、何やってるのよ」
由美が苛った声で健を押しのけ、自分で番号を押した。
結果は同じだった。
「何よこれ。なんでかないのよ」
「ママ、くけて。僕トイレきたい」
隼がそのでをばたつかせ始めた。
「故障か?」
健がドアノブをガチャガチャと回すが、びくともしない。
「まさか、お義父さんが番号を変えたりして……」
由美が青ざめた顔で呟いた。
そのだった。
隣のドアが静かにいた。
いつもち話をしていた奥さんが、顔をした。
「あら、息子さんたち。お帰りなさい。ご旅、どうだった?」
「あ、どうも。楽しかったです。
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それより、うちのドアがなんだか調子悪くて」
健が困ったように言うと、隣の奥さんは議そうに目を瞬かせた。
「え?でも、あなたたちのお宅、今、しい方が引っ越しされてきましたよ」
空気が止まった。
「……しい方?」
由美の声が震えた。
「ええ。お昼に若いご夫婦がトラックでいらして、ご挨拶にも来てくださいましたよ。奥さん、お腹がきくてね」
健と由美のので、断片な報が恐ろしい形に繋がっていく。
若い夫婦。
妊娠の妻。
引っ越し。
しい。
「そんな……」
由美がそのに座り込みかけた。
「何かお困りですか?」
背から声がした。
振り返ると、幸運産のファイルを持った男性がっていた。担当者の田だった。
「もしかして、以こちらにおまいだった鈴様のご族でしょうか」
「以ってどういうですか。ここは今も私たちのです」
健が声を荒げた。
田は困った顔をしながらも、事務に答えた。
「こちらの物件は先、正式に売買契約が完しております。本、しい買主様である佐藤様がご入居されました」
「契約……?」
健の顔が歪んだ。
「ふざけるな。誰が勝に俺たちのを売るんだ」
「売主は所者である鈴正雄様ご本です。正雄様がご自ので、正式な続きを踏んで売却されました」
父さんが。
父さん本が。
その事実が、健の最の希望を打ち砕いた。
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由美はにへたり込み、隼が泣きした。
「ママ、おどうなったの。僕のおもちゃは?」
健は震えるでスマートフォンを取りし、正雄に話をかけた。
呼びし音が続く。
るはずがない。
そうった瞬、通話がつながった。
「もしもし」
聞こえてきたのは、紛れもない父の声だった。
だがその声は、今まで聞いたことがないほどたく落ち着いていた。
「父さんか。どういうことだ。なんでが売られてるんだよ」
話の向こうで、正雄がかすかに笑った気配がした。
「おたちの?笑わせるな」
その声は、氷のようにたかった。
「あののローンを払ったのは誰だ。固定資産税を払い、管理費を払い続けてきたのは誰だとっている」
「それは父さんだけど、でも俺たちのじゃないか。隼がまれてからずっとんできた、いのなんだぞ」
「いか。良い言葉だな。それなら、これからは写真ででも見て懐かしむがいい」
あまりにも非な言葉だった。
由美が健からスマートフォンを奪った。
「お義父さん、どうしてこんなことをなさるんですか。私たちがどこで暮らせばいいんですか。隼はどうなるんですか」
「俺のったことではない」
正雄の声は揺らがなかった。
「おたちが望んだことだろう。舅が邪魔だ。さっさとてってほしい。そう願っていたじゃないか。
だから望み通りてってやっただけだ。謝されこそすれ、文句を言われる筋いはない」