みかん小説
本棚

"たばこを買いに来るおじさんの心の声が、俺にだけ聞こえる" 第5話

のおまでなくなった

「蒼介さんに何の用?」

銭をトレーに置こうとした親父のが止まった。

「何に来るか聞くだけだろ。つきってる相に、親が挨拶もしちゃいけないのか」

会計を終え、缶を袋に入れた。取ろうとした袋を放さず、480万円を誰が払ったのか聞いた。窓際では作業の客がレンジを待ち、入には傘を選ぶ女性がいた。隣のレジは空き、直は銭を数え終えて引継表を取りにったところだった。督促の話は階段までて取る親父が、今は声を張った。

「久世さんが自分から助けてくれたんだ。無理に払わせてないぞ」

聞き違いであってほしかった。、靴を買い替えるのも友達と遊ぶのもした額だ。親父は言でそれを片づけ、次のまで借りる気でいる。

「また頼むために、いつ来るか聞いたの?」

〈今はいくら?〉は未返信だった。そのには料に送られてきた額。の、親父の誕の週、俺がギプスをしていても送った振込があった。

「返し終わったのに、なんで教えなかった?」

「今分かっただろ」

「あのに、俺のことなんて言ったの」

「バイトで苦労してるって。いくらも貯まらないし、だって同じコートばっかり着てるって」

覚えていたんだ。毛玉のついたコートを買い替えず、親父がで何度も見ていたマフラーを誕に買った。

広告

今も着の襟からその柄が見えている。普段どうして俺にはそんな話をしないのか、もう聞かなかった。

親父が袋を引き寄せると、ファスナーの古い鍵が台に当たった。

「体の具が悪くてな。入院だって言われた。あれこれすと200万りない。おから言うほうが聞いてもらえる」

にさっきのが浮かび、かえって落ち着いた。

「どこの病院?」

「の話をしてるんだぞ」

「請求見せて。病院を教えてくれれば、授業のあと緒にくから」

で病気の類なんか広げられるか、と言う。へようと言っても、缶の付を見たり戻したりしてかない。子どもの頃、親父がるたび、箸を置くのを待ち、テレビを消すのを待ち、最に俺から「もういいよ」と言った。今度は釣り銭を押しした。

「本当に悪いなら付き添う。蒼介さんにおは頼まない」

親父が台を叩いた。レンジが鳴ったのに、作業のは弁当を取らずにこちらを見た。

「は頼んだらしたのに、ろ盾ができたら親に逆らうのか。そんなに偉いなら、480万も返してもらえばよかっただろ」

「親父の借だし、俺も今聞いた」

「誰が信じるんだよ」

分の振込をつずつ読んでやりたくなった。スマホを握っても、親父が聞きたいのはつ、次の200万がるかだけだ。カウンターのへ回り、声を落としてくれと頼んで通を空けた。

広告

親父は袋を脚に当てながらがった。傘を選んでいた女性が、本当に入院するなら先に類を見せたら、とさくを挟んだ。

親父は笑いして、内の事ですからと返す。彼女がれると、「今晩話しろ。……は何も待てない」と声を落とした。

あまりにい言い直しに、笑いかけた。昔、俺の分のねぎをよけてくれた顔だった。のうち、いつか度でも俺が楽になることを考えたか聞きたかった。もう当たりのいい答えを待つのはやめた。

「自分で連絡するなら、今の話を全部伝える。200万は円もないよ」

親父は袋をに置き、また声を張った。

「成瀬悠真、16もの男とつきうのなんか、目当てだろ。いい子ぶるなよ」

入のベルが鳴った。振り向くと、蒼介さんが折り畳み傘を持ってっていた。先からが落ちていた。いつもなら真っ先に俺を見る。その晩は、親父を見た。

「今の、俺のでもう度言ってください」

藤野が倉庫からてきて、入につをへ通そうとした。直がサインのない引継表をに続いた。

「、レジの引きしに置いといた引継、8万円がありません」

親父の向こうから、俺を指さした。

「あのときカウンターのにいたの、悠真だけです」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: