"2億円の幽霊屋敷で、腹ぺこの悪霊を雇いました" 第2話
座卓の脚は苦い
ライトを向けると、まず角の欠けた座卓が見えた。そので、男が脚の1本にかじりついていた。黒いの裾がほこりのに広がっている。男はまぶしそうに目を細め、ようやくをからした。
「何見てる。腹をすかせたやつがそんなに珍しいか」
座卓の脚は半分ほどなくなり、い断面に歯形がいくつも残っていた。たとえ幽霊でなくても、具を盗りに来たにしては、だいぶ変わっている。
「焼きなす、べる?」
「こんなところに焼きなすを持ってくるやつがいるか」
「今夜べなくなったがいてね」
容器をけると、アルミ箔の内側にまだ湯気が残っていた。男はじっと見つめたあと、なぜかまた座卓の脚をかじり、自分で眉をひそめた。
「桐は苦いし、に刺さる。誰だ、こんな座卓を置いたのは」
「僕も来たばかりだから、文句はの持ち主に。箸、使える?」
男がを伸ばした瞬、袖に青黒い痕が見えた。敷居のに触れた指が震え、箸が落ちる。見えない戸につかえたようだった。
「毒でも入れたか」
「毒なんか入れたら弁当箱がもったいない。ほら、けて。座卓の脚よりはましだから」
睨まれたが、差ししたなすはべた。ひと目をのみ込んでから、いこと黙っていた。次を差しすと、今度は自分からし顔を寄せた。
敷居にの具が埋め込まれていた。
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よく見ると、真鍮の鍵の切り欠きと、具の脇のくぼみがぴたりとう。どうやらだけをける鍵ではないらしい。
「してあげる。代わりに、うちで働かない?」
「何をするんだ」
「留守番と料理。洗濯も頼む。掃除は広いから半分ずつ」
「それだけか?」
ひどく真面目な顔だったので、ついからかいたくなった。
「はえそうだし、布団まで温めてくれたら助かるな」
「断る」
「分かった」
ふたを閉めてつと、壊れた輪がを度こすった。背で座卓の脚が落ちる音がした。
「待て。引き受ける」
「どこまで?」
「全部。最のやつもだ。くしろ」
目をそらしたが赤い。笑いながら戻って、容器を彼のそばに置いた。
「最のは冗談。料理は本気。名は?」
「朔(さく)」
鍵を具に差し込んで半回転させると、濡れたが裂けるような音がした。ちがった朔は敷居をまたぐ寸でよろめいた。受け止めたに、越しでも腰の骨が分かった。
「いこといてなかっただけだ」
「もうしべないと。米袋も運べそうにない」
朔は何か言い返しかけ、僕のほうへほんのし体を預けた。肩の力が抜けたのが分かった。をすと、何もなかった顔ですぐに背筋を伸ばした。
が吹き込むので、予備のマフラーを肩にかけてやった。台所はがたが、鍋の底に穴がある。今夜はもう度、通りまで買いしだ。
「置いていっていいのか。俺が逃げたら?」
「れるようになってから言って。なす、半分残ってるから。僕にもくらい残せたら残して」
を図で探しながらをて、振り返った。さっき持ちがった具は閉じていたが、すきから赤いが漏れている。朔は柱にもたれたまま、それをで押し込んだ。
「くけ。待ってるから」