"2億円の幽霊屋敷で、腹ぺこの悪霊を雇いました" 第1話
今夜、ここをていけ
「怜がここにむ。寝はあいつに使わせるから、おは今夜ていってくれ」
久世誠司(くぜ せいじ)がそう言ったとき、僕はに落ちた薬を拾っていた。元に転がった錠剤をよけて、誠司は「マットレスは置いていけよ。怜は腰が悪いから」と付けした。
僕が買ったソファに腰かけ、僕が洗った毛布を膝にかけた怜(しらいし れい)がを挟んだ。
「俺なら客でいいよ。相原さん、ここに3もんでたんだろ?」
「直なら平気だよ。頼んだことは何でもやるし、文句も言わない。そもそも俺についた厄を抑えてもらうために、婚約までして緒にんだんだ。おが戻ってきたなら、もういいだろ」
最の1錠を拾い、ほこりごとゴミ箱に落とした。
「分かりました、久世さん。いつものシーツ、納戸に品がありますけど。替えていきましょうか」
「いい。代わりに桐坂町(きりさかちょう)の敷をやる。名義を移す続きは司法士に頼んでおく。古いが、は悪くない。切れにはなるだろ」
「あの敷を?」
怜のが毛布ので止まった。
おととし、あの敷に入った男がで倒れているのが見つかった。それ以来、元では幽霊敷だの事故物件だのと呼ばれている。とはいえ、駅から歩いて15分の旧に、敷が1,000平方メートルくある。に誠司の机で見た産の査定には、だけで約2億円といてあった。
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あの噂が広まった今、いくらで売れるかは別の話だ。
「も建物も、僕の単独名義でいいんですね?」
誠司がうなずいたので、所と約束をそのでLINEに残してもらった。僕の名も省かずに、相原直(あいはら なおき)と入れてもらう。画面を保して顔をげると、自分でも驚くくらい素直に笑えた。
「ありがとうございます。ずいぶん気がいいんですね」
3は、まとまったが必だった。あのの厄が騒ぐたび、け方までそばに座り、朝になっても指がかじかんでコップを持てないことがあった。寝の鍵をくれたとき、誠司は言った。夜にいちいちノックするな。起こされると迷惑だから。
その鍵を薬箱の横に置いた。荷物はスーツケース1個に収まった。台所に寄ると、焼きなすがまだ温かい。もともと2分作っていたから、2つとも持ってた。背で名を呼ばれたが、寝るの薬なら自分で分けられるはずだ。
午9半、マンションのでタクシーを拾った。榊(さかきし)の側から旧へ向かうと、線の架を越えたあたりからが濃くなった。灯が黄くにじんでいる。
「榊桐坂町2丁目7番まで。旧久世邸のところです」
「……桐坂町のどちらです?」
町名を繰り返すと、運転は交差点のでを止めた。
「あそこですか。のは敷まで入りたがる、いないですよ。
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おととし運転代のドライバーが客ので入って、翌朝、の入りで倒れてるのが見つかったんです。助かったけど、名を聞いても『腹をすかせてるがいる』としか答えなかったとか」
「じゃあ桐坂通りの交差点でろしてください。のは歩きます」
「交差点までなら」とがきした。りるにメーターにた2,340円を払い、トランクから荷物をしてもらった。輪が1つ取れかけていると、そこで運転が気づいた。その輪を畳に引きずり、最の灯を過ぎた。誠司が引きしの底からしてきた真鍮の鍵は、にずしりとかった。
けたの先で、雑が段を覆っている。刈りを頼むなら何いるだろうと考えていると、のれで、い飴を噛み砕くような音がした。
「誰かいますか。いないなら入りますよ」
音がやんだ。僕が段目にをかけると、部の奥から男の声がした。
「入るならくしろ。何持ってきた? いい匂いがする」