"義妹が私の弁当に入れたものを、夫が食べた" 第1話
スマートフォンのスピーカーから、夫の司である田さんの鳴のような声が響いた。
「奥さん、也君が倒れました。この弁当に、毒が入っています」
薬局の事務で昼休憩を取っていた私は、に掛けていたカーディガンをに落とした。
「えっ……也はどうなったんですか?」
「今、救急で病院に運ばれました。とにかくすぐに来てください」
話はそこで方に切れた。画面には午115分と表示されている。
也から「ごめん、今は俺がいただきます」という能気なメッセージが届いてから、わずか3のことだった。
私は職に退を告げ、震えるでタクシーを呼んだ。にび乗りき先を告げても、臓の悸がの奥でうるさく鳴り続けている。
田さんの言葉がので何度も再され、朝の来事が馬灯のように蘇ってきた。
午7半。姑の史子さんが控えめな顔でがを訪ねてきた。
「千佳さん、今は仕事でしょう。お昼にべてね」
には濃紺のさな保バッグが握られている。史子さんは嫁である私に、わざわざお弁当を作って持ってきてくれたのだ。
は鮭、卵焼き、そして私が好きだと言った野菜の煮物だと教えてくれた。私はんで受け取り、玄関の靴箱のに置いた。
そのすぐ横には、夫の也がいつも会社に持っていく、よく似た濃紺の保バッグが並んで置いてあった。
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今朝の也は寝坊して慌てていた。ネクタイを締めながら玄関にびし、「ってきます」と保バッグをひったくるようにしてをてった。
私が自分の弁当がないことに気づき、代わりに也の空のバッグが残されているのを見つけたのは、彼が発してから10分ほど経ったのことだった。
『私のお弁当、お義母さんの作だからわってべて笑』
文字のスタンプと緒に送ったメッセージからの、あの呑気な返信。あの弁当は、本当は私がべるはずのものだったのだ。
それに毒が入っているなんて。そんなはずがない。史子さんと私は良好な関係を築いており、彼女が私を害する理由などどこにもなかった。
病院の救急来に駆け込むと、待の子でを抱えている田さんの姿があった。スーツのシワも気にせず、顔を真っ青にしている。
田さんに案内された処置のは、苦しい空気が漂っていた。也はまだで治療を受けているという。
「今は胃の洗浄や点滴を受けています。命に別状はないだろうと。でもひどく苦しそうで……」
田さんは言葉を詰まらせた。私はしだけ堵の息を吐き、すぐに向き直った。
「さっき話で毒と言っていましたよね。あれはどういうことですか?」
私の声は自分でも驚くほどたくかった。
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田さんはビクッと肩を揺らし、持っていたビニール袋を両でく握りしめた。
そこには見覚えのある濃紺の保バッグと、半分ほどべられた弁当箱が入っていた。
「也君、11半頃にめのお昼を取っていたんです。でも半分くらいべたところで急に顔が悪くなって、吐き気を訴えて」
私がすぐに救急を呼びました。それで先ほどお医者さんから説があって、と田さんは慌てて言葉を継いだ。
「お医者さんが毒だと言ったんですか?」
「いや、正確には違います。通常の毒ではなく、何らかの害な物質を摂取した能性も考えて検査すると」
医師からの言葉を聞き、転した田さんが毒と表現してしまったらしい。だが、事態の刻さは変わらない。
「お弁当は私が預かっています。お医者さんにも見せたんですが、のため保管しておくように言われて」
差しされたビニール袋の隙から、プラスチックの弁当箱が見えた。崩れた卵焼きと半分残った煮物。それを作ったのは違いなく史子さんだ。
普通ならここでどうするだろうか。すぐに史子さんに話をかけ、お弁当に何を入れたのかと問い詰めるのが自然な反応かもしれない。
私はバッグからスマートフォンを取りし、史子さんの連絡先を表示させた。通話ボタンを押せばすぐにつながる。
史子さんはきっと驚き、パニックになるだろう。