"深夜零時、本妻へ捧げた告発" 第13話
「都プレシジョン社の法務コンプライアンス部、ならびに京国税局査察部に対してこの資料が提された、何が起きるか。柴崎氏、あなたには痛いほど理解できているはずです。懲戒解雇は当然のこと、退職の支、刑事告訴による実刑判決、そして横領の全額返還請求。あなたが今まで必になって守ろうとしてきた社会位、企業の肩、そして。そのすべてが、瞬にして燼に帰すことになります」
会議のを、兼の荒い呼吸の音だけが支配していた。 空調のの音すら、兼を追い詰める嘲笑のように響く。
「……智恵」 兼が、机のに両をつき、掠れた声で妻を呼んだ。 「智恵……頼むよ。許してくれ。悪かった……俺が全部悪かった! 会社にだけは……都プレシジョンにだけは言わないでくれ! 会社をクビになったら、俺はきていけない! 萌の養育費だって払えなくなるんだぞ!?」
智恵は、願する夫の姿を、ただややかに見つめていた。その瞳には、涙の滴すら浮かんでいなかった。かつてし、信じ、そして数にわたり自分と娘を欺き続けてきた男の成れの果て。そこにいたのは、憎の対象ですらなく、ただの汚らわしい害虫だった。
「萌の名を、そので呼ばないで」 智恵の声は、静かだったが、部の空気を震わせるほどのみを持っていた。
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「あなたが萌の父親としてしていたこと自体が、あの子にとって最の汚辱よ」
智恵はバッグから、丁寧につ折りにされた枚の便箋を取りした。 桜の、女趣の便箋。の娘、萌の文字が几帳面に並んでいた。
「萌から預かってきたよ。読みげてあげましょうか」 「や、やめろ……」 兼がを塞ごうとする。だが、智恵の透き通るような声は容赦なく朶を打った。
『お父さんへ。 お父さんが夜に帰ってきて、お母さんと玄関で鳴りっていたあの、私は自分の部で全部聞いていました。 お父さんが代のフリをして若い女のを騙していたことも、族を捨てて遊んでいたことも、全部りました。 気持ち悪くて、吐き気が止まりませんでした。 私の受験の費用を理由にしてお母さんを脅していたそうですね。私のを、自分のみっともない言い訳の具に使わないでください。 私は、お父さんのおで学にきたいなんてこれっぽっちもいません。奨学を借りて、バイトをして、お母さんとできていきます。 度と私のに現れないでください。お父さんなんて、私のに最初からいなかったといます。 さようなら』
「ああああああっ……!」 兼のから、引き裂かれたような慟哭が漏れた。 机のに突っ伏し、脂汗と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、兼は両でを掻きむしった。
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男が最も切にしていた「良き父親」「能なビジネスマン」「若々しく魅力な男」という幾もの仮面が、完全に々に砕け散った瞬だった。
藤原弁護士が、冊目のファイルから枚の類を取りし、兼の目のに滑り込ませた。 『公正証作成嘱託』。
「条件を申しげます」 藤原弁護士は事務な調で言い渡した。
「第に、柴崎智恵様との協議婚に直ちに同すること。女・萌様の親権は智恵様が持ち、柴崎氏との面会交流権は切認めないこと。 第に、越の自宅産(査定額千百万円、残債なし)の所権を智恵様に無償譲渡すること。 第に、ネクストフロンティア社名義の座、および柴崎氏個の裏座にする預千百万円のうち、千百万円を財産分与および智恵様への解決・慰謝料として直ちに支払うこと。 第に、萌様の学卒業までの養育費として、毎万円を遅滞なく支払うこと。 そして第に――」
藤原弁護士の線が、遥へと向けられた。 遥は静かに背筋を伸ばし、兼の顔を真正面から見据えた。
「瀬尾遥様に対する貞操権侵害の慰謝料として、百万円を括で支払うこと。これらすべての条件を呑み、本に公正証作成の委任状に署名・押印するのであれば、都プレシジョン社への告発、ならびに印公文偽造罪での刑事告訴は、現点においては猶予いたします」