"深夜零時、本妻へ捧げた告発" 第11話
「あなたが瀬尾様の勤務先を興信所を使って調べげ、つきまとう恐れがあることは事に定しておりました。先ほどからの暴言および脅迫言は、すべてこちらのICレコーダーおよびビルの防犯カメラに鮮に記録されております。刑法第百条の脅迫罪、および第百条の未遂罪に該当するらかな法為です」
警備員が無言で兼のを固める。 兼の顔から急速に血の気が引き、気の皮膚が磁のように蒼へと変わっていった。 「べ、弁護士……? 智恵が、ここまで……」
「ええ。なお、本午、さいたま庭裁判所へ婚調の申してをうとともに、あなたが隠匿していた『限会社ネクストフロンティア』名義の裏座、および個名義のつの隠し預座に対する仮差押えの続きを完いたしました」
藤原弁護士が発した『ネクストフロンティア』という単語を聞いた瞬、兼の全が目に見えて痙攣した。膝の力が抜け、で濡れたアスファルトにそのまま崩れ落ちそうになるのを、警備員が背から厳しく制止した。
「な、なんで……なんでその名を……」 「来週の曜、午。私の法律事務所にて、協議のを設けます。あなたの代理弁護士を通じて正式な通を送付してありますので、逃げずにしてください。
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もし期に現れない、あるいは瀬尾様や智恵様に対してこれ以の接・連絡を試みたは、直ちに警察へ被害届を提し、刑事事件として件いたします」
兼はのにへたり込んだまま、信じられないものを見る目で遥と藤原弁護士を見げ、ただ浅く、喘ぐような呼吸を繰り返すことしかできなかった。 遥は度もその惨めな姿に同の線を送ることなく、藤原弁護士と共に静かに踵を返し、かなの灯るオフィスロビーへと戻っていった。
週の曜、午。 霞が関の官庁に隣接する、なオフィスビルの階。藤原綜法律事務所の第会議には、苦しい沈黙が淀んでいた。
窓のには、晩の澄み渡った青空が広がっていたが、内の空気は氷点に凍りついているかのようだった。方形のマホガニーのテーブルを挟んで、双方が対峙していた。
方には、柴崎智恵と、その隣に座る遥。そしての代理を務める藤原弁護士。 智恵は濃紺のシンプルなスーツにを包み、背筋を凛と伸ばしていた。その表には、あの夜の話で泣き崩れていた々しさは微もなく、娘の未来を守るために覚悟を決めた母としての、研ぎ澄まされた徹さが宿っていた。
対するテーブルの向かい側には、柴崎兼と、彼が慌てて雇ったとしき、代半ばの頼りなさげな男性弁護士が座っていた。
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兼は着崩れたスーツにを包み、机ので落ち着きなく両を擦りわせていた。目のには墨を流したような濃い隈が落ち、線は宙を彷徨い、決して智恵や遥と目をわせようとはしなかった。
「それでは、定刻となりましたので、柴崎兼氏に対する婚条件、財産分与、養育費、ならびに瀬尾遥様に対する法為に基づく損害賠償請求の協議を始いたします」
藤原弁護士の瞭な声が、静寂を切り裂いた。 兼の代理弁護士が、気まずそうに咳払いをし、元の類をめくった。
「ええと……まず、当方の主張といたしましては、柴崎兼氏と瀬尾遥様との交際につきましては、男女の自由なに基づくものであり、の誇張や分の偽りがあったとしても、それが直ちに民法の法為、すなわち貞操権の侵害に当たるとまでは言えないのではないかと考えております。また、婚姻関係の破綻につきましても、の夫婦の性格の致が主たる原因であり、兼氏側の方な責為と断定するには――」
「戯言を仰らないでください」 藤原弁護士が、相の弁護士の言葉を容赦なく遮った。 その鋭利なに、若い男性弁護士はわず息を呑んで押し黙った。
藤原弁護士は、鞄のから分い冊のフラットファイルを机のに叩きつけるように置いた。