"深夜零時、本妻へ捧げた告発" 第10話
男の浅なプライドと保の狂気が、事態をさらなる修羅へと加速させようとしていた。
柴崎兼の破滅への狂は、宿のホテルラウンジで遥と智恵がを結んだ、まさにその翌週の曜に幕をけた。
に入り、のイチョウが鮮やかな黄に染まり始めた青の裏通り。遥が勤める総PR会社「オルタス・コミュニケーションズ」が入居するガラス張りのオフィスビルのには、ええとしたがそぼっていた。
午半、定をし過ぎた頃、クライアントへのプレゼン資料をまとめ終えた遥は、オフィスのエントランスをて傘をいた。舗装されたアスファルトに粒が弾ける音を聞きながら鉄の駅へと向かおうとしたその瞬、植え込みのけ垣のから、黒い傘をく差したが音もなく滑りて、彼女のを遮った。
「……遥」
く湿り気のある、ひどく掠れた声だった。 傘のから現れた顔を見て、遥のが止まった。 わずかまで「相原蓮、歳」を演じていた男の面は、そこには微も残っていなかった。 黒く染め直したはずの側部にはい毛混じりのえ際がし、入れのき届いていたはずの肌は気に淀み、剃り残した無精髭が元を浅ましく覆っている。
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級ブランドのダウンジャケットのに着込んだワイシャツの襟元は皮脂で黄ばみ、何より、その双眸の奥には、追いつめられた獣特の血った狂気が渦巻いていた。
「蓮くん……いいえ、柴崎さん」 遥は傘を握り直すと、歩ろへ退き、声のトーンを極限までく保った。 「何の用ですか。度と私のに姿を現さないでと申しげたはずですが」
兼は乾いた唇を歪め、引きつったような笑みを浮かべた。 「たいじゃないか、遥。半、あんなにしってた仲なのにさ。……なあ、頼むよ。ちょっとだけでいいから、くの喫茶で話を聞いてくれ。このままじゃ俺、本当に全部失っちまうんだよ」
「話すことなど何もありません。あなたとは完全に終わりました。これ以つきまとうなら、今すぐ警察に通報します」
遥がコートのポケットからスマートフォンを取りそうとした瞬、兼の表から卑屈な笑みが消え失せ、剥きしの獰猛さがその顔を覆い尽くした。兼は傘を投げ捨てるようにしてに踏みし、遥の首を掴もうとを伸ばしてきた。
「警察だと!? ふざけるなよ! 警察に駆け込むべきは俺の方だ!」 兼の唾が、煙のにび散る。 「おが智恵に余計な話をしたせいで、俺はから締めされてビジネスホテル暮らしだ! あいつは弁護士をてて、俺の通帳も保険証も全部差し押さえようとしてる! お、智恵とグルになって俺を嵌めたんだろ!? 俺のを滅茶苦茶にしてタダで済むとってんのか!?」
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「をおしなさい」 遥は叫びもせず、ただ徹に男の目を射抜いた。 「自分の蒔いた種でしょう。偽造の保険証で分を偽り、結婚をチラつかせて私を弄んだのはあなた自よ。庭が壊れたのも、奥様に見限られたのも、すべてあなたの自業自得です」
「黙れ! おだって過ぎてき遅れて、必になってたからびついてきたんだろうが! 若いイケメンと付きえて内ウハウハだったくせに、今さら被害者ヅラしてんじゃねえよ! おい、ここはおの会社だな? 今からの階に乗り込んで、おがの庭を壊した棒猫だって全社員のでバラしてやろうか!? おのだって連れにしてやるぞ!」
兼が遥の腕を力任せに掴もうとした、そのだった。
「そこまでにしていただけますか、柴崎兼さん」
背から、靴音とともに響いたのは、凛とした質な女性の声だった。 ビルのエントランスホールからに現れたのは、グレーのスーツにトレンチコートを羽織った藤原弁護士と、柄な男性警備員がだった。 「な、なんだおらは……!」 兼がたじろぎ、掴みかけのを引っ込めた。
「柴崎智恵様の代理弁護士、藤原です」 藤原弁護士は兼の先に弁護士バッジと分証を突きつけ、ややかに告げた。