"深夜零時、本妻へ捧げた告発" 第8話
この証拠が、奥様の今のご判断に役つのであれば、すべてお使いください」
智恵は、ファイルのに綴じられた夫の「おと会ったのは運命だ」「妻とは終わっている」という甘ったるいメッセージの数々を、指先で静かになぞった。 その表に、涙はなかった。 ただ、たい氷のような軽蔑と、諦めが混ざりった笑みが、その唇に微かに浮かんでいた。
「……ありがとうございます、瀬尾さん。あなたがここまで誠実な方で、救われました」 智恵は顔をげ、静かに語り始めた。
「先の話でもしってしまいましたが……夫の貞は、これが初めてではないんです」
ラウンジの静かなピアノの演奏が、智恵の告のに静かに滑り込んでくる。
「今から、娘が学を卒業する直にも、同じことがありました。そのもマッチングアプリでした。代半ばの、護師の女性でした。夫は今回と同じように、齢を歳と偽り、独を装って交際していたんです」
遥は息を呑んだ。 「に……」
「はい。そのも、女性側が審にって自宅にを送りつけてきたことで発覚しました。あの、夫は私の実の両親ので座をしました。『度としない』『携帯のパスワードもすべて示する』『遣い制にして与座の管理もすべて妻に渡す』と、涙を流して謝罪したんです。
広告
あの子……娘の萌が、父親をとても慕っていたこともあって、私は迷った末に、婚を踏みとどまりました。それが、私の最の過ちでした」
智恵の指先が、テーブルので固く握りしめられた。 「夫は、反省などしていなかったんです。ただ、バレないためのを巧妙にしただけでした。遣い制にされたことで、夫は会社の経費を正に操作したり、架空のコンサルティング業務を装っての会社にキックバックを求し、自分名義ではない隠し座にをプールし始めました」
「隠し座……」 「ええ。夫は精密器メーカー『都プレシジョン』の営業統括部補佐という役職に就いています。対な評判は非常にく、社内でも『仕事で望のいミドルマネージャー』として通っています。でも、実態は違いました。部にパワハラを繰り返し、自分の成績を増しし、浮いた予算を私腹を肥やすために流用していたんです。あのマツダのも、法の名義を正に利用して個リースを組んでいたことが、今回の騒で判しました」
藤原弁護士が、静かにをいた。 「柴崎兼氏は、にわたり、徹底した自己演と経済・精神DVによって、智恵様を支配に置いてきました。『おのような世らずの専業主婦が、で娘を育てられるわけがない』『婚するなら親権は俺が取るし、養育費も円も払わない』と脅し続け、智恵様から反論の気力を奪ってきたのです」
広告
「そんな……」 遥は戦慄した。 あの、ので懐っこい笑顔を浮かべ、「遥の好きな無糖ラテ」を差ししてきた男の裏の顔。面の良さと、内に対する酷な支配欲。その面性のあまりの落差に、寒気が止まらなかった。
「私はずっと、婚を考えて弁護士の先に相談していました」 智恵は静かに続けた。 「でも、決定な証拠が掴めなかったんです。夫は回の反省(というより保)をかして、女性との連絡には暗号化されたメッセージアプリを使い、証拠を自宅には切持ち帰らないようにしていました。何より、隠し座のを証できなければ、財産分与をごまかされ、娘の学学の費用すら奪われてしまう。そうやって踏みをしているうちに、娘はになり、番過酷な受験期に突入してしまった……」
智恵はく、遥の目を見つめた。その瞳には、いが宿っていた。
「瀬尾さん。あなたが先週の曜、あの話をくださったこと。そして、夫のから類を見つけしてくれたこと。それが、このの暗を打ち破る、唯のになったんです」
「私の話が……ですか?」
「はい」智恵は力く頷いた。「あの夜、あなたが教えてくださった通り、夫は分に帰宅しました。私がチェーンをかけてに入れず、『瀬尾さんという女性から話があった』と告げた瞬、あのはパニックに陥りました。