"深夜零時、本妻へ捧げた告発" 第7話
枕を濡らす涙は、しみのためではなかった。あまりの悔しさと、自分自の見る目のなさに対するけなさで、胸が張り裂けそうだった。
だが、このまま終わらせる気は毛なかった。 「即別れた」で済ませられるほど、彼女が差ししたとはくない。
週末がけた曜の夕方、遥の勤めるPR会社に、本の話が入った。 受付の内線を取った同僚が、怪訝な顔をして受話器を遥に渡してきた。
「瀬尾さん、弁護士の先からお話です。柴崎様という方の代理とおっしゃっていますが……」
社内の空気が瞬、ピリついたのを遥はじ取った。 「変わりました、瀬尾です」 遥は平静を装いながら、受話器をに当てた。
『突然の業務のご連絡、失礼いたします。柴崎智恵様の代理を務めております、弁護士の藤原と申します。瀬尾遥様でお違いないでしょうか』
話の主は、落ち着いた、な女性の声だった。 「はい、瀬尾です。……奥様の、代理の方ですね」 『はい。先の件につきまして、依頼である柴崎智恵様より、瀬尾様にどうしても直接お会いして、お話ししたいことがあると預かっております。もちろん、瀬尾様のお気持ちやおを最優先いたしますが、度、おをいただくことは能でしょうか』
遥は帳のスケジュール表を見つめた。
広告
曜の夜の話。智恵の泣き声と、そのの徹な声。 敵対するための呼びしではないことは、その声音から察しがついた。
「わかりました。本の終業、以であればお会いできます。所は、目のいホテルのラウンジなどをご指定いただけますでしょうか」 『ご配慮いただき恐縮です。では、宿の京王プラザホテルのメインラウンジでいかがでしょうか。席をお取りしておきます』
約束を取り付け、受話器を置いた。 隣の席の輩が「瀬尾さん、何かトラブルですか?」と配そうに尋ねてきたが、遥は「個な相談事よ、丈夫」とだけ答えて微笑んでみせた。仕事のをかしながら、遥ののでは、これから始まるであろう局面へのシミュレーションが徹にんでいた。
午分。 宿の層ホテル、の照が落とされた広なラウンジの奥まったテーブル席に、の女性が座っていた。 は、グレーのパンツスーツをパリッと着こなした代とおぼしき女性弁護士。そしてもうは、黒い質なタートルネックセーターにキャメルのハーフコートを羽織った、代半の女性だった。
髪をろで綺麗に束ね、化粧は控えめだが、肌のきめ細かさと形の良い筋が、育ちの良さをじさせる。だが、その目元には隠しきれない疲労と、く刻まれた苦悩のが張り付いていた。
広告
「瀬尾さん、ですね。お忙しいところ、本当にありがとうございます」 柴崎智恵はちがり、遥に向かってく、折り目正しくをげた。 「初めまして。瀬尾遥です。どうぞお座りください」
名刺を交わし、席に着く。 運ばれてきたダージリンティーの湯気を見つめながら、遥はあらかじめ用していたみのあるクリアファイルをテーブルのに置いた。
「まず、こちらをお受け取りください」 遥はファイルを智恵の方へと滑らせた。 「彼――柴崎兼さんが『相原蓮』と名乗っていたマッチングアプリのアカウントの魚拓、LINEの全トーク履歴、そして先週曜の夜、彼が逆して私にかけてきた話の音声データをき起こした記録です。通話の録音原本も、こちらのUSBメモリに入っています」
智恵と藤原弁護士は、顔を見わせた。 藤原弁護士が驚いたように鏡のブリッジを押しげ、ファイルをに取った。 「……これは、恐れ入ります。ここまで完璧に理していただいているとはいませんでした」
「私は、彼が既婚者であることを本当にりませんでした」 遥は智恵の目をまっすぐに見据えて言った。 「ですから、奥様に対して法な慰謝料の支払い義務がないことは理解しております。ですが、結果としてご庭をこのような事態に巻き込んでしまったことについては、義な責任をじています。