みかん小説
本棚

"深夜零時、本妻へ捧げた告発" 第4話

などと軽を叩いている。

遥は助席の窓に額を押し当て、流れていくの景をただ見つめていた。 膝ので握りしめた拳の爪が、のひらの肉にくい込み、鋭い痛みを伝えてくる。 泣き寝入りなんて絶対にしない。 ここで取り乱して、ので「あんた誰なのよ!」と問い詰めるのは簡単だ。だが、そんなことをすれば、男はそので適当な言い訳を並べて、証拠を隠滅し、逃げしてしまうに決まっている。 許せない。私の半を、私の真剣ないを、私の歳のを、こんな劣な嘘で踏みにじったこの男を、絶対に許さない。

世田区の環通り沿いにある遥のマンションのにがまったのは、それから分のことだった。 「着いたよ。薬んで、ちゃんと温かくして寝るんだよ」 兼は助席の遥の肩にを置こうとした。 遥は咄嗟にシートベルトをす作でそのを躱し、ドアをけた。 「うん、ありがとう。送ってくれて」 「、起きたらLINEしてね。おやすみ、遥」

笑顔で見送る男に、遥は度だけさく会釈をし、振り返らずにエントランスへと歩をめた。 オートロックのガラス扉を抜け、エレベーターホールへ入る。背で、CX-5の排気音がざかっていくのが聞こえた。

部に入り、玄関のドアを閉め、鍵をにかけた瞬、遥はそのにへたり込んだ。

広告

靴も脱がず、たいフローリングのたたきのに膝をつく。 呼吸が荒く乱れ、胸が激しくした。 バッグからスマートフォンを取りす。の震えが止まらない。 画面をタップし、先ほどメモ帳に保した話番号を表示させた。

局番、048。 埼玉県の固定話の番号。 刻は午分。常識に考えれば、のに話をかけるではない。しかも、相の妻にとっては、見ずらずの女からの夜の話だ。

だが、躊躇する理由はどこにもなかった。 遥のは今、取り返しのつかない形でを塗られたのだ。相の庭の平など、ったことではない。そもそも、その平とやらは、目のの男の醜悪な欺瞞のに築かれたハリボテに過ぎないのだ。

遥は呼吸をつし、通話ボタンを押した。

受話器から流れる、プルルル、プルルルという無質な呼びし音。 静まり返った玄関に、その子音が恐ろしいほどきく響き渡る。 回、回、回。 ないか。寝静まっているのか。あるいは、留守番話に切り替わるのか。 回目のコールが鳴り響いたとき、にカチャリと受話器が持ちがる湿った音がした。

『……もしもし、柴崎ですが』

受話器の向こうから聞こえてきたのは、予していたような甲い声でも、眠気の声でもなかった。

広告

く、落ち着いていて、だがどこか底の方に張り詰めた糸のような緊張を孕んだ、の女性の声だった。

遥は喉仏を度させ、唇をいた。声が震えないよう、肺のの空気をすべて押しすようにして言葉を紡ぐ。

「夜分遅くに突然のお話、変申し訳ありません。柴崎兼さんの、奥様でしょうか」

話の向こうの空気が、微かに揺らぐ気配配がした。 『……はい。そうですけれど。どちら様でしょうか? 夫はまだ、仕事で帰宅しておりませんが』

妻の言葉は丁寧だったが、その背には見らぬ女からの夜の話に対する、鋭い警戒が張り巡らされていた。 遥は背筋を伸ばし、徹に、言言をナイフのように研ぎ澄ませて告げた。

「突然このようなお話を差しげる無礼をお許しください。私、瀬尾遥と申します。……お宅の旦様である兼さんは、現、歳独の『相原蓮』と名乗り、私と半、結婚を提に交際しています」

受話器の向こうから、完全に音が消えた。 呼吸の音すら途絶えたかのような、のような沈黙。 秒、秒。その空のさに、遥の臓が痛いほど鐘を打つ。

「私は歳で、真剣に結婚を考えておりました。交際を始める際、相が既婚者でないこと、独であることを何度も押しして確認しました。彼は偽造された保険証まで見せて私を騙し、将来の約束を交わしていました。

先ほど、彼ののの類から本当のお名とこちらの番号をり、居てもってもいられずお話いたしました」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: