"23年逃げた母が、娘のスマホの中にいた" 第16話
すごくいい写真だから、お母さんにあげる」
写真のの私たちは、満の菜のを背景に、肩を並べて笑っていた。気取ったポーズも、作り笑いもない。互いを信頼し、守り抜いた者たちだけが浮かべられる、穏やかで澄んだ笑顔だった。
、着の着のままで夜列にび乗った、私は自分の過の写真を枚も持ってこなかった。すべてを消しらなければ、きていけないとい込んでいたからだ。
だが、今は違う。
過の傷を消しることはできなくても、その傷が私を壊すことは度とない。私には、守るべき族があり、歩むべき未来がある。
「ありがとう、美咲。切にするわ」
私は写真を財布のポケットに丁寧に収めた。
自宅のにめた、さないコンパクトカー。フロントガラスには、誇らしげに若葉マークが貼られている。
運転席に乗り込み、シートベルトを締める。キーを回すと、エンジンがく、滑らかな音をてて目を覚ました。
助席に健が座り、部座席から美咲がを乗りしてくる。
「運転さん、今の目はどこですか?」
美咲の楽しげな声に、私はバックミラーをわせ、ギアをドライブに入れた。
サイドブレーキをろす。私の両は、しっかりと、微の迷いもなくハンドルを握りしめていた。
「を見にきましょう」
私はアクセルを静かに踏み込んだ。
「ののに閉じ込められていた頃から、ずっと見たかったの。どこまでも広がる、青い平線を」
が、のに満ちたへとゆっくり滑りしていく。け放った窓から吹き込んでくる柔らかなが、私の髪を優しく揺らした。
母にされなかった過は、もう変えられない。けれど、その寂しさを娘に受け渡すかどうかは、今の私が決められる。