"古希の夜、二人の嫁は手を引いた" 第18話
俺はもう、見栄のために嘘をつかない。……もし許してくれるなら、このの同居として、もう度やり直させてほしい」
私は静かに夫を見つめた。 涙を流してすがるわけでもない、等の男の反省がそこにあった。
「いいわよ」
私はちがり、台所へ向かった。
「ただし、事は完全折半。私の空には指本触れないこと。それが条件よ」
夫はくをげ、「ありがとう」とさく呟いた。
夫婦のが完全に元通りになったわけではない。 の亀裂は、そう簡単に埋まるものではないだろう。 けれど、嘘と搾取のに成りっていた関係は終わり、対等なとしてのしい同居が始まったのだ。
のが柔らかく差し込む午。
私は階の、かつて義母が使っていたにいた。
畳をすべて張り替え、壁にはるい成りのクロスを貼った。 部の央には、私が独代に用していた製の作業机と、真しいミシンが置かれている。 とりどりの布や刺繍糸が、棚のに然と並んでいた。
結婚してから、忙殺されて触ることすら諦めていた、私の芸の。
カタカタカタ……と、ミシンのリズミカルな音が部に響く。 窓のからは、鳥のさえずりが聞こえていた。
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
ミシンのを止め、エプロンをして玄関へ向かう。
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引き戸をけると、そこには柄のカーディガンを着て、産の菓子折りを両で持った義母がっていた。
アパートで暮らしを始めて半以が経ち、腰はしったようだが、背筋はすっきりと伸びていた。
「こんにちは、千里さん」
義母はし緊張した面持ちで、丁寧にをげた。
「こんにちは、お義母さん。どうぞ」
私が促すと、義母は玄関のがり框ので、ぴたりとを止めた。 かつてのように、同然の図々しさでがり込んでくる気配は微もなかった。
義母はにったまま、控えめに私を見げた。
「……がっても、いいかしら?」
敷居を跨ぐに、の主へ許しを乞う、その言。
胸の奥の最の棘が、すうっと音をてて溶けていくのをじた。 にも、にもなかった、者としての正しい礼節がそこにあった。
「ええ、どうぞ」
私が微笑んで答えると、義母は「お邪魔します」と言って静かに靴を揃えた。
奥のリビングからは、休みで帰省している音の「おばあちゃん、いらっしゃい!」というるい声が聞こえてくる。 台所では、夫がお茶を淹れる準備をしていた。
私は作業部へ戻り、窓枠にを置いて、夕暮れに染まり始めた空を見げた。
、このを取り巻いていた苦しいは、もうどこにもない。 守り抜いたのは、単なる階建ての造宅という産ではなかった。
自分のを、自分ので選び取っていくという、当たりの尊厳だったのだ。
私たちは、誰かのためにきることをやめたわけじゃない。 ただ、これからは、自分のを誰かに勝に決めさせない。
それだけだった。