"18年介護した義母が亡くなった翌日、私は横領犯にされた" 第15話
「……世体ですか」
「ええ。ヤミと繋がっていた親族など、あのたちにとっては最の毒ですから」
吐き気がするほど分かりやすい、この親族の勝さ。 昨の今まで私を「」「棒」と蔑んでいた連が、今度は由加里を切り捨てて逃げ惑っている。 義母が守りたかった「の誇り」は、義母のわずかヶで、自分たちが招いた欲と保によって内側から腐り落ちたのだ。
からの連絡は、にに狂気を帯びていった。 スマートフォンの画面に並ぶ、未読通の。
『美、を売るなんて無理だ。俺はどこにめばいいんだ』 『会社に由加里の件で怪文が届いた。昇の内示が取り消されたんだぞ。お、何かってるんだろ?』 『すまなかった。本当に悪かった。毎コンビニ弁当をべていると、おの作った噌汁をいすんだ。もう度だけ、話しえないか』 『頼むから返事をしてくれ。俺をにしないでくれ』
画面をスクロールする指先は、微だにしなかった。 れみすら湧かない。 自分が追い詰められたにしかの痛みを像できない男。 妻の尊厳を売りばそうとした過を、たかが「コンビニ弁当の寂しさ」できしようとする浅さ。
私はすべてのメッセージをスクリーンショットで保し、弁護士へ転送したあと、の番号を着信拒否にした。
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「直接の連絡は切断ってください。すべて私を通すように伝えてあります」
佐伯弁護士の事務なメールが通届き、私の携帯は完全に静寂を取り戻した。
婚届の受理は、区役所の民課でわれた。 弁護士同伴のもと、パーテーションで区切られた相談ブース。
週ぶりに現れたは、まるで別のように老け込んでいた。 皺だらけのスーツ、無精髭、落ち窪んだ目。 元には、佐伯弁護士から突きつけられた条件をすべて呑んだ、公正証の。 自宅産は売却にされ、私の持分相当額と替、慰謝料を含めた計千百万円が私の座へ信託保全されることが決定していた。
「……サインしたよ」
が震えるで緑の用を差しした。
「美……本当に、これでおしまいなのか」
「ええ」
私はペンを取り、署名欄に自分の名を迷いなく記入した。 画画、圧を込めて。 の呪縛を、葉のに刻みつけて切り落とすように。
印鑑を押す。朱肉の鮮やかな赤が、に沈んだ。
「美、覚えてるか? 昔、で箱根にった――」
「覚えていません」
私は顔もげずに遮った。
「過の記憶は、すべてあの病と法の広に置いてきました。私のに、あなたたちの居所はもうありません」
の喉がヒッと鳴り、そのままテーブルに突っ伏して肩を震わせた。
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泣き声が漏れる。 だが、窓の職員も、佐伯弁護士も、誰としてその背に同の目を向ける者はいなかった。
私は類式を窓に提し、受領印が押されるのを見届けた。
「続きは完いたしました。お疲れ様でした」
職員の械な声。 私はちがり、度も振り返ることなく区役所の自ドアを抜けた。
しく借りた賃貸マンションは、私鉄沿線の駅からし歩いた宅にあった。 階の向き。遮るもののないバルコニーからは、の澄んだ青空がどこまでも広がっていた。
引っ越し業者がり、部にはまだ梱していない段ボールがいくつか残されていた。 フローリングのに座り込み、用品の箱をけていく。
その番底から、透なビニール袋に入った枚の布が現れた。
の、カシミヤのストール。
義母が息を引き取る週、病のベッドので私に渡してきたものだ。
『美さん、これ、昔買ったきり使ってないの。あなた、肌がいから、よく似うわよ』
骨の浮きたで私の首を包み込み、潤んだ目で見つめてきた義母の顔。 あの瞬、私は胸の奥がくなり、「ありがとうございます」とをげたのだ。 の確執が、をにしてようやく解けたのだと、本気で信じてしまったのだ。
ストールを指先で持ちげる。
滑らかな触り。だが、肌に触れた瞬、氷のようにたくじられた。
あのは、どんな顔をしてこのストールを用したのだろう。