"18年介護した義母が亡くなった翌日、私は横領犯にされた" 第3話
ベッドので、義母は々しく微笑んでいた。 渡されたのは、病院の売で使うプリペイドカードの購入代と、用品の補充に関する同だったはずだ。
『老鏡を自宅に忘れてきちゃってね。文字がさくて読めないのよ。病院から、族の誰かのサインが必だって言われてねえ……すまないねえ、けないねえ』
あの、義母は確かにそう言って、私のを握った。 骨と皮ばかりになったたい。 結婚以来、私を遇し続けた義母が見せた、初めての脆い姿。 私はそのさに毒気を抜かれ、「いいですよ、いておきますね」とペンをらせた。
(……あのだ)
私は受任確認の跡を指でなぞる。 私の名のの部分、『預座の払戻しおよび財産管理に関する切の権限を委任する』という条項。 文字のフォントが、の署名欄とわずかに異なっている。 縮コピーした別の定型文を、から切り貼りして再コピーしたような、微細な歪み。
義母がでこれを作れるはずがない。 病のベッドので、が麻痺した老が、類の偽造などできるわけがない。
誰かが恵をつけ、を貸したのだ。
ガチャリ、と玄関のドアがく音がした。 い取りでリビングに入ってきたは、ネクタイを乱暴に引き抜き、ソファに倒れ込んだ。
「……おい。まだその類見てるのか」
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嫌を絵に描いたような声。
「見ているわよ。私のがかかっているもの」
「げさなんだよ」
は井を見げたまま、吐き捨てるように言った。
「由加里がああ言ってるのも、母さんを失ったショックのせいだ。おが変に突っかかるから余計に拗れるんだよ」
「突っかかる? 私が百万を盗んだって言われて、黙ってをげろとでも言うの?」
「そうは言ってないだろ!」
がね起き、テーブルを拳で叩いた。 コーヒーカップがさくねる。
「ただ、おが母さんの通帳を預かってたのは事実なんだから、疑われても仕方ないだろって言ってるんだ! の潔を証したいなら、座の履歴を全部見せて、百万の穴埋めをどうするか話しえばいいじゃないか!」
臓の奥が、すっとえていくのが分かった。
「……穴埋め?」
私は静かに夫を見返した。
「さん。あなた、私が盗ったとって話してるのね」
「ってない! ってないけど……」
は苛たしげに髪を掻きむしった。
「母さんはぬに、俺にも言ってたんだよ。『美さんはしっかりしてるから、私の定期預のことまで細かく聞いてくる』って。母さんがそんな嘘をつく理由があるか? お、昔から母さんに嫌を言われてんでただろ。しくらい、仕返ししてやろうって気になったんじゃないのか?」
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の結婚活が、音をてて崩れ落ちていく。 この男にとって、私のの尽力も、夜に義母の汚物を処理したの覚も、何つ信用に値しなかったのだ。 母親の言葉というだけで、客観な証拠もない傷を、いとも簡単に真実として受け入れる。
「……そう」
私は帳を閉じた。 乾いた音が、リビングの静寂に落ちる。
「あなたがそうやって母親の妄言に逃げ込むなら、これ以あなたと話すことはないわ」
「なっ……逃げ込むだと!? 俺はおたちの板挟みになって番苦しんでるんだぞ!」
「苦しんでいるは、妻を犯罪者扱いして『百万を用てろ』なんて言わないわよ」
たく言い放つと、は息を呑み、悔しそうに元を歪めて寝へと消えた。 乱暴に閉められたドアの振が、を伝わってくる。
私は、暗くなったリビングでスマートフォンの画面を点灯させた。 は夜のを回っている。
に溺れている暇はない。 、朝番でく。 義母がに使っていたメインバンク――方の支へき、直の取引履歴の示請求をかける。 相続の配偶者というでは請求を拒否される能性がある。だが、私にはあの『受任確認』がある。 義母が私を嵌めるために用した「財産管理代理」という分を、逆に取って武器にする。
画面をスクロールしながら、私は義母の遺を見つめた。 遺のの佐子さんは、品の良い着物を着て、ややかに微笑んでいるように見えた。