"十八万円を浮かせたい義母の計算" 第5話
指先がキーボードを叩く。現監督として培ったスキルが、迷いなく指をかしていく。
、製造予定総数:菜玉(推定総量約240〜260kg)、標準必数:延べ32(熟練作業員4名×8/)、程分解:・次トリミングおよび縦分割:約4(1玉あたり約2.5分)・段洗浄および抜き:約6(温管理・異物混入検査含む)・塩振り程:約5(塩分濃度2.7%厳守、各葉均等塗布)・樽詰めおよび初期加:約3(30L樽×8樽、総量約500kg)、・品質管理のリスク:・作業員による洗浄程の縮は、壌細菌(セレウス菌等)の残リスクを著しくめる。・揚げ遅延による納品遅れ、および異常発酵の発懸。
淀みなく、徹に。分の作業記録、気温ごとの塩分調データ、仕込みから揚げまでのタイムリミット。そして、予約客件の氏名、連絡先、受取希望、引き渡しの特記事項。
すべてを完璧なビジネス文としてまとめげた。私がこれまで、あの暗い作業で「を使わずに」やっていると見されていた作業のすべてが、いかに緻密な程管理のに成りっていたかを、のに晒す資料だ。
最に、私は文の末尾に、太字でき加えた。
『本午をもちまして、織による舗支援業務はすべて終いたしました。
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現作業員名の独断によるキャンセルに伴う損害、納品遅延、顧客クレーム、責任につきましては、舗経営者である千代氏が全責任を負うものとします。なお、今の業務相談・程指導につきましては、部コンサルタント費用(あたり千円・事予約制)を申し受けます』
作成にかかったは、わずか分だった。
私はそのPDFファイルを、の公式メールアドレスに添付した。さらに、義母のスマートフォンと、夫の聡史、そして男である正志さんのアドレスをCCに入れる。
送信ボタンをクリックした。
カチリ、とマウスの音がさく部に響く。送信完のポップアップが表示された瞬、私の胸の奥から、苦しい澱のようなものが気に抜け落ちていった。
これで、あので起きるすべての来事は、私の問題ではなくなった。経営者が自分で撒いた種を、自分で刈り取るだけの「正当な現実」になったのだ。
ピピッ。
静まり返った部に、スマートフォンの子音が鳴り響いた。画面を見ると、夫の聡史からだった。
『織、頼むから戻ってきてくれ。母さん、さっきのメール見て顔真っ青にして鳴り散らしてる。「あんな気な切れ送りつけてきて何様のつもりだ」って。俺も正志兄さんも、菜の切り方すら分からないんだよ。
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予約客の話も鳴り始めてる。頼むよ、今だけでいいからさ』
私は画面を見つめたまま、返信しなかった。指を滑らせて、通を消する。
すると髪を入れずに、今度は着信のバイブレーションが始まった。画面に表示された名は【義母】。
テーブルので、スマートフォンが激しく振する。ブーッ、ブーッ、ブーッ。回、回、回。
私は受話器を取らず、そのまま放置した。回ほど鳴って切れたかとうと、すぐに留守番話の通が入る。
スピーカーホンで再してみた。
『――織さん! あんた何考えてるの! あんな脅迫みたいな類送りつけて! に穴をけたらどうするの?! お父さんの代からの板に傷がついたら、あんたかけて責任取れるの?! いいからく戻ってきなさい! 今ならまだ許してあげるから!』
ヒステリックに裏返った義母の声が、リビングの壁にね返る。最はガチャリと乱暴に話が切れる音で終わっていた。
「許してあげる、か」
私はわず、乾いた声で呟いた。加害者が被害者に向かって「許してあげる」。どこまで傲で、どこまで現実が見えていないのだろう。
私は留守番話のデータをそのまま保護設定にし、消のフォルダへ移させた。確実な証拠は、ければいほどいい。
計の針は午を回っていた。ふと、スマートフォンの画面にLINEの通がポップアップした。
表示された差を見て、私はしだけ眉をかした。
【松本由美】
今朝、義母にドタキャンされた臨パートのリーダー、由美さんからだった。