"十八万円を浮かせたい義母の計算" 第1話
1228、午530分。
のフロントガラスは完全に凍りついていた。解氷スプレーを吹きかけ、ワイパーを度だけかす。ガリガリと鈍い音をてて削ぎ落とされた氷の破片が、暗いアスファルトのに散った。
息を吸い込むだけで、肺の奥がキリキリと痛むような底えの朝だった。
をらせて分。義理の実が営む漬物処の裏にある、トタン根の作業に滑り込む。勝のいアルミサッシをけると、湿った気と、の匂いが混ざった独特の青臭さがを突いた。
などない。あるのは、コンクリートの叩きに剥きしの管と、凍結防止のヒーターが巻かれた蛇だけだ。
の央には、緑のコンテナが井くまで積みがっていた。昨、隣の契約農からトラックで運び込まれた菜だ。葉を落とし、を払い、計量された状態のものが、規則正しく並んでいる。
コンテナの数を数える。、、……。全部で箱。箱に玉。
然と積まれた玉の菜。
さにしておよそ百キロ。これを今のうちにすべて縦つ割りにし、葉の傷みを削ぎ、で度洗い、芯に切り込みを入れ、量の・パーセントの荒塩を作業で葉の枚枚に擦り込んでいかなければならない。さらにキロの漬物樽へ隙なく敷き詰め、総量の倍――百キロを超える漬物を均等に積みげる。
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それをかけてげさせ、晦の朝から順次、予約客に渡す。これが、義父がきていた頃から続くこのの、最の稼ぎだった。
私はのゴム袋をはめ、靴の爪先を軽くトントンとに打ちつけた。午になれば、所の松本由美さんたち臨パートがやってくる。すでに作業割り振り表は作り終えていた。洗いに、塩振りと樽詰めに。私は全体の発注管理とチェック、そしての積みろしを担当する。
そのはずだった。
を分過ぎても、作業の引き戸はかなかった。
分。誰も来ない。由美さんは分には必ず現に入り、エプロンを締めながら「織ちゃん、今もよろしくね」と声をかけてくれるだ。遅刻など、こので度もなかった。
嫌な胸騒ぎがして、私はエプロンのポケットからスマートフォンを取りした。由美さんの番号を呼びそうとした瞬、作業の奥、母へと続く引き戸がガラリといた。
義母の千代だった。
臙脂の分いフリースを着込み、には湯気をてるマグカップを持っている。首には毛糸のマフラーをに巻き、元は真しいボア付きの防寒スリッパだった。
「あら、織さん。もう来てたの」
義母は私の顔を見るなり、ぬるい湯呑みでも差しすような気のない声をした。
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「お義母さん、由美さんたちがまだ見えないんですが。何か連絡ありましたか?」
作業の気温は度を切っている。私の吐く息は真っだったが、義母の元からはい息がない。母のが効いた部からてきたばかりだからだ。
義母はマグカップにをつけ、ゆっくりとお茶をすすった。
「ああ、由美さんたちなら来ないわよ。断ったから」
作業の換気扇が、カラカラと乾いた音をてて回っていた。
「……え?」
私の喉から、掠れた声が漏れた。
「断ったって、何をですか」
「何って、お伝いよ。話してね、今はもう来なくていいって伝えておいたの」
義母は眉ひとつかさずに言った。まるで、聞の定期購読を回分止めたとでも言うような軽さだった。
「ちょっと待ってください。今から漬け込みを始めないと、の引き渡しに絶対ににいません。分の配は、先のうちに私がシフトを組んで、由美さんたちにも受けてもらっていたはずです」
「だから、それをやめにしたの」
義母はマグカップを持ったまま、積みがった菜のに目をやった。
「由美さんたちに来てもらったら、件費だけで万円もんでいくじゃない。たかが漬物を作るだけで万よ? そんなの無駄遣いもいいところだわ。今は内だけでやればいいのよ。