"夫の「俺の奢り」は、私のカードでした" 第15話
そして、私名義の共財産からの正斗の完全な権利放棄。
「藤沢さん……いや、礼子さん。これで法な続きはすべて完しました」代理弁護士が、押印済みの類をファイルに収めながら言った。
「正斗氏の個座は、会社からの損害賠償請求の仮差し押さえと、こちらの債権執により、ほぼ底をつくことになります。退職の支も規定違反により見送られる見込みです」
「結構です。法に則った正当な権利を回収できただけで分です」私はくをげた。
公証役をると、暗くなった通りにたいがり始めていた。傘をこうとした瞬、灯のからずぶ濡れの男がびしてきた。
「礼子……!」
正斗だった。コートも着ず、のねたスラックスに、虚ろな目。昼の尊な態度は消え失せ、まるで迷子の子供のように肩を丸めて震えていた。
「礼子、頼むよ……話をさせてくれ。俺が悪かった。全部俺が悪かったんだ……!」
づこうとする男のに、私は傘の先をすっと向けた。それ以の歩を、物理に拒絶する。
「づかないでください。これ以つきまとうなら、警察に通報します」
「そんなたいこと言うなよ! だぞ!? 俺たち、あんなに仲良くやってきたじゃないか! おがいなきゃ、俺は何をどうすればいいのか分からないんだよ……!」
正斗は濡れたアスファルトのに膝をつき、にを突いて懇願した。
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「頼むから婚を取り消してくれ! 望美とも完全に縁を切った! お袋のことも度と寄らせない! おの言う通りにするから……俺を見捨てないでくれよ……!」
見ろす私のには、驚くほどさざ波つたなかった。かつてした面を探そうとしても、そこにはの善を貪り、それが尽きた途端に泣きつく寄虫の姿があるだけだった。
「、ですか」私の声は、音よりも静かに響いた。
「あなたが私の信用で贅沢をし、私の仕事を都のいい隠れ蓑にし、最は『礼子が何とかしてくれる』と笑っていたです。私が支えていたのはあなたではなく、あなたという形をした虚栄でした」
「礼子……!」
「度と私のに現れないでください。あなたのの始末を引き受けるは、もうこの世界のどこにもいません」
私は背を向け、のを歩きした。背で「礼子! 礼子ーッ!」と狂ったような叫び声が響いたが、度も振り返ることはなかった。角を曲がると、その声はの音に呑まれ、あっけなく消えった。
翌週、私は務めた会社のデスクを片付けていた。
私物を詰めたさな段ボール箱がつ。の歳に対して、驚くほど軽な荷物だった。
「藤沢取締役……本当にってしまわれるのですか」任として部から招聘されたしい財務部が、名残惜しそうにをげた。
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真面目で実直な代半の公認会計士だ。
「ええ。引き継ぎ資料はすべてクラウドに格納し、監査済みのログと紐づけてあります。例処理のルールもすべて文化しておきました」
私はデスクの鍵を彼ののひらに置いた。
「つだけ、お願いがあります」
「はい、何でしょうか」
「この会社で、誰かに責任や始末を丸投げする仕組みを、絶対に作らないでください。族経営だからこそ、ではなく客観な数字とルールで守らなければ、組織は内側から腐っていきます」
任の財務部は、私の目をまっすぐに見つめ、力く頷いた。「肝に銘じます。あなたがえてくださったこの透な秩序を、必ず守り抜きます」
「よろしくお願いします」
私はさく会釈をし、段ボール箱を抱えて役員のドアをけた。エレベーターをり、エントランスをる。見送る者はいなかったし、私自それを望まなかった。
見げた晩の空は、ひとつなく澄み渡っていた。
自宅に戻ると、スマートフォンにいメッセージが届いていた。差は、義母の苗だった。
実のれに追いやられ、耕造とも庭内別居となり、所の世体からも逃げ隠れるように暮らしているという。画面には、言い訳と懇願がき連ねられていた。
『礼子さん、私、あなたがいないとの修理つ頼めないのよ。
お父さんはを利いてくれないし、正斗は借の督促で荒れて実に寄り付きもしない。