"実母の50万円、義母の500万円" 第1話
「おの母親に万円もすなんて正気か」
夕の卓、夫の公平が吐き捨てた言葉に私は箸を止めた。腸がんの術を控える実母へ、私の個座から万円を貸すと伝えた直のことだった。
「保険もあるし、だってているはずだ。本がなんとかするべきだろ」
夫は茶碗を乱暴に置き、忌々しそうに眉を寄せた。結婚して、この男が私の親族や痛みに度でも寄り添ったことなどない。
「私の独代の貯と、父が遺してくれたおよ。夫婦の活費には円もをつけていないわ」
喉の奥が乾くのをじながら、私は声の温度を極限まで落として返した。ここでになって声を荒らげれば、相の毛な俵に乗るだけだ。
「結婚している以、おのだってこのの予備資だろうが。俺に相談もなしに勝にかすな」
夫は顎を突きし、自分の理屈が絶対であるかのようにを鳴らした。あまりの傲さに、喉元までかかったりをたい理性で押し戻す。
「じゃあ、あなたのお母さんが急に倒れても同じように突き放すの?」
夫は瞬だけ言葉に詰まり、居悪そうに線を泳がせた。しかしすぐに顔を張らせ、激しいをわにする。
「話をすり替えるな。うちのお袋は健康だし、事が違う」
「何が違うの?」
広告
「とにかく、そんな勝な費は絶対に認めないからな」
夫は方に言い捨てると、事を途で放棄して寝へ引きこもった。めかけた噌汁を見つめながら、私は徹に状況を理する。夫にとって私の預は都のいい予備資であり、私の実母は赤のなのだ。
翌朝、何わぬ顔で勤していく夫の背を無言で見送った。玄関のドアが閉まるのを確かめてから、引きしの奥から自分名義の通帳を取りす。残は約百万円、父の遺産と私が積みててきた特財産だ。
平の午、の窓で迷わず母の座へ万円を送した。直に母から「必ずしずつ返すからね」と震える文面のメッセージが届く。自分ので切なを守るのに、夫の許などミリもいらない。
その夜、万円を振り込んだと告げると夫は激昂したが、私は帳をめくるを止めずに淡々と受け流した。そしてえ切った空気のまま、ちょうどが過ぎた。オフィスのデスクで類を確認していた私のスマートフォンが、けたたましく震えす。
ディスプレイに表示された夫の名に、嫌な予が背筋をった。平の昼がりに話をかけてくることなど、滅にない。私は非常階段の踊りへ移し、通話ボタンを押した。
広告
「もしもし、どうしたの」
「美咲、美咲か!?」
受話器からび込んできたのは、を疑うほど切迫した夫の裏返り声だった。普段の横柄な態度は完全に消え失せている。
「どうしたの? 落ち着いて」
「お袋が倒れたんだよ! 救急で運ばれたんだ!」
臓がさくねた。義母の代は歳、持病もなく元気に暮らしをしていたはずだ。
「病院はどこ? すぐに向かうわ」
「待て、来るのはでいい!」
「なんでよ。族が付き添うべきでしょう」
「それよりだ! 頼む、百万円だけしてくれ!」
百万円という唐突な数字に、踊りのたい空気ので息が止まりそうになった。、私の母への万円を激しく罵倒した夫が、倍の額を求している。
「……百万円? 病院からそう言われたの?」
「ああ! すごいがかかるらしいんだ! とにかく今すぐ現が必なんだよ!」
夫のな説には、あからさまな自然さが滲んでいた。本の医療制度で、救急搬送当に窓で数百万円の現を即請求する総病院などあるはずがない。
「分かったわ」
「本当か!? してくれるんだな!?」
「ええ。病院の指定座を教えて。私が直接確認して全額を振り込むわ」
通話の向こうが、を打ったように静まり返った。夫の荒い息遣いだけが、気に響いている。
「……は?」
「だから、病院の窓に直接支払うわ。
百万円もの、個の座を経由させるより確実でしょう」
「だ、ダメだ! それじゃ困るんだよ!」
「どうしてダメなの? お義母さんの治療費なんでしょう?」