"夫の親孝行は、私の持ち家でした" 第4話
奥のから、着替えを済ませた子がのそのそとてきた。 には、どこから持ってきたのか、昨夜夫のバッグに入っていたものと同じマンションのチラシが握られている。
子はチラシを私ののテーブルに放りすように置いた。
「これ、駅で配ってたのよ。見てごらんなさいな。やっぱり最のマンションは違うわねえ。ディスポーザーもついてるし、コンシェルジュもいるんですって。修ももう課なんだから、こういう級のある所にまなきゃ、会社での示しがつかないわ」
私はお茶を淹れるを止めず、ややかに義母を見つめた。
「お義母さん、これ、修さんから見せてもらったんですか?」
「え? あ、まあね。修が昨、パンフレットを持って帰ってきたのよ。あの子、本当に親孝な子でねえ。『母さんにこんな古いでさせるわけにはいかない』って、真剣に考えてくれてるのよ」
子は自げに顎をしゃくった。 古い、という言葉をわざわざ調しながら。
「今のを売れば、千万円以にはなるんでしょう? それだけあれば、この広い部も買えるじゃないの」
「お義母さん。このは、私が独代に自分の貯で買ったです」
私は湯呑みを子のにコトリと置いた。 濁りのない、まっすぐな線で義母の顔を射抜く。
「売るか売らないかを決めるのは、私です。
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修さんではありません」
子の顔から、瞬で笑みが消えた。 眉にい皺が寄り、をわにしてを鳴らす。
「まあ、真由美さん。あなた、まだそんな狭量なことを言ってるの?」
「狭量?」
「夫婦なんだから、どちらの名義でも同じでしょうが」
子は湯呑みを取りげ、傲な調で言い放った。
「結婚しても経ってるのに、私のだの何だのと……。修が族のためにをにして働いてるのに、嫁のあなたが持参代わりにを差しすのは、妻として当然の務めじゃないの? 昔の嫁はね、実の財産をすべて嫁ぎ先に捧げたものよ」
言葉を失うほどの代錯誤。 だが、このは本気でそう信じているのだ。 男教という名のカルト宗教に染まり、息子の見栄のためなら嫁の財産などいくらでも収奪していいとい込んでいる。
「差しす、ですか」
私はく角をげた。 反論するのも馬鹿馬鹿しい。 だが、ここでりを爆発させては、相の俵に乗るだけだ。
「修さんは、この広い居に、誰と誰をまわせるつもりなんでしょうね」
鎌をかけるように呟くと、子は瞬、線を泳がせた。 だがすぐに、何でもないことのように言い繕った。
「そりゃあ、族に決まってるじゃないの。私と、あなたたち夫婦よ。部がたくさんあるなら、万がのに親戚を泊めることもできるしね」
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嘘をついている。 目がに泳ぎ、指先がせわしなくいている。 弟夫婦の名を、私のでは図に隠しているのだ。
そのの夜、さらなる確証が向こうから転がり込んできた。
夕、リビングでスマートフォンを眺めていた私の画面に、族LINEグループの通がポップアップした。 義母、夫、義弟の浩、弟嫁の美智子、そして私のが入っているグループだ。
送信者は、子だった。
画面をくと、昼に見せられたグランドメゾンの観完成予図が投稿されていた。 そして、そのに添えられたメッセージ。
『来には、みんなでしいにめそうです。男の修が、族のために頑張って決断してくれました。派な息子を持って、母さんは誇らしいです』
その文面を見た瞬、私の指がピタリと止まった。
『みんなで』
義母と夫、そして私だけなら、「みんなで」という表現は使わない。 このグループに、誰が含まれているか。 浩と、美智子だ。
すかさず、浩からスタンプが連投された。 両を挙げて万歳をしている熊のキャラクター。
『兄貴、マジでありがとう! 駅から徒歩分とか最すぎる! 今のアパート、湿気ヤバいから助かるわ!』
続いて、弟嫁の美智子からのメッセージ。
『お義兄さん、本当に頼りになります! ルーフバルコニーでお茶するの、今から楽しみにしてますね!』
スマホの画面越しに、寄虫たちが歓に沸く声が聞こえてくるようだった。