"花嫁が逃げた祝言で、毒を盛られた若旦那が選んだ女中" 第15話
まさにその、お染の体を引きずっていこうとしていた権蔵が、突如としてをぴたりと止めた。
権蔵は縄がい込むお染の細い首を見つめ、1の女を救うために誇りを捨てて面に膝をつき泣いている源の姿を目にし、そしてで勝ち誇っている庄兵の醜い顔を見つめた。
その瞬、権蔵の胸ので何かが音をてて崩れ落ちた。主である庄兵から毒殺の密命をされたから、権蔵のなけなしの良は毎夜激しい呵責に苛まれていたのだ。お染が2命がけで源を守り抜いてきたことも、忠義者の宇兵にまで無実の罪を被せようとしていることも、これ以は耐えられなかった。
権蔵はお染の首にかかっていた荒縄を解き放つと、庄兵が鳴りつけるのも構わず、庭の真んでどさりと両膝を面についた。
「申しげます!この権蔵、に誓って全ての罪をここに状いたします。若旦様の薬に夜な夜な毒を混ぜておったのは、お染ではございません、この私にございます!そしてその恐ろしい罪を私に命じ、裏で糸を引いていた張本は、そこにいらっしゃる分の庄兵様でございます!」
庭にが落ちたかのような衝撃がる、権蔵は震える声で悪事の数々を細かに暴した。
「庄兵様は当主の座と本の莫な財産をが物にするため、若旦様を病に見せかけてき者にしようと企まれました。
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ところが若旦様が奇跡に息を吹き返されたため、今度はその罪の全てをのきけないお染になすりつけようと、昨夜私ので偽の毒の包みを部に仕込ませたのです」
権蔵は面に額を擦りつけ、涙を流しながら懺悔を続けた。
「あの毒薬は、町のれにある怪しげな薬種問から密かに買い入れたもので、主が砒素を調して作った秘薬にございます。お染には何の罪もございません。むしろお染がその毒を防いだおかげで、若旦様は命を取り留めることができたのでございます。どうかこの罪である私を、いかようにもお裁きくだされ!」
その、縄を解かれたお染が静かにへと歩みた。そしてのや懐に隠し持っていた証拠の数々――抽した毒の末と、権蔵が捨てた毒の付着した包みを、集まった親族や奉公たちのに並べてみせた。
「おい、あれを見ろよ、本当に毒のじゃないか。普段はあれほど慈いお方を気取っておきながら、腹のはそこまで腐りきっていたとはな」
権蔵の々しい自とお染が差ししたかぬ物証をに、周囲の差しは氷のようにたく変わった。源がゆっくりとちがり、威厳に満ちた声で庄兵に告げた。
「叔父、これでもまだを切り通されるおつもりですか。
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権蔵の証言があり、お染が命がけで集めた物証があり、毒を売った薬種問もはっきりとわかっているのです」
言葉を失った庄兵は、じりじりとろへがると、隙を見て突然を翻し、表へ向かって脱兎のごとく逃げそうとした。
「逃がすな、捕らえよ!」
源が鋭くすると、男の奉公たちが斉にびかかり、暴れ回る庄兵を面に組み伏せた。
源はすぐさまこの件を元の代官所へと訴えた。お染が集めた証拠、権蔵の自、宇兵の証言の全てが提され、町れの薬種問にも臨検の捕方が差し向けられた。
薬種問の主は最初こそらぬぜぬを通そうとしたが、権蔵と直接引きわされて証拠を突きつけられると、観して全てを状した。
「違いございません。この男が夜な夜な毒を買いに来ていた代にございます。庄兵様というお方からの指示だと言って、砒素を混ぜ込んだい毒薬を何度も買い求めていきました」
捕方たちはに残されていた毒の成分や、密売の記録が記された裏帳簿までを全て証拠品として押収した。
代官所のお洲にて厳粛な裁きが執りわれ、縄をかけられた庄兵が引きされた。それでも庄兵は往際悪くに額を擦りつけ、権蔵や卑しい飯炊き女が自分を陥れるためにでっちげたのだと見苦しく喚き散らした。