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"花嫁が逃げた祝言で、毒を盛られた若旦那が選んだ女中" 第6話

権蔵のような無学な無頼漢が作りせる代物ではなく、背に医薬の識に精通した狡猾な者が潜んでいる証拠だった。

朝が来ると、お染は何事もなかったかのように台所へ向かい、を汲んで竈にを入れ、朝餉をえた。

その、裏庭の目につかない物のくに毒の入った液体を埋めた。ただ、包みに残っていたひとつまみのだけは、いつのか真相をのに晒すのかぬ物証とするため、布切れに包んで別に保管した。

その様子を、忠義筋に仕えてきた老僕の宇兵がくから偶然目撃していた。宇兵は声をげて問い詰めるような真似はせず、ただ静かに見守っていた。

宇兵は随分から、卑しい分のはずのお染の洗練されたち振るいや、薬を扱う見事な際、折瞳の奥に揺らめくい志のを見て、には言えぬい事があるのだろうと察していたのだ。

翌から、お染の孤独で危うい戦いが本格に始まった。

夜になるたび、権蔵は薬のに毒のを忍び込ませた。お染は見えていないふりをし、権蔵が引きがるとすぐに毒入りの薬を別の器へ移し替え、密かに煎じた薬を夫へませた。

薬を調達するため、お染は台所仕事のわずかなを縫っては目を盗んでくのや野原へを運び、薬を摘み集めた。

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周囲の者は、物言わぬ飯炊き女が汁物の具にする野を摘んでいるのだろうとを括っていた。

これほど蝕まれた体を蘇らせるには、まず毒の摂取を断ち、すでに臓腑に染みついた毒を洗い流さねばならない。お染は緑豆と甘を丁寧に煎じ、薬の搾り汁をわせて、しずつ夫の唇へと運んだ。

ところが、3が経過しても源の容態は良くなるどころか、かえって悪化していく方だった。顔はますますに濁り、息遣いは荒くなり、喉を潤すための湯さえ受けつけず何度も激しく吐き戻してしまう。

お染は胸が締めつけられるような恐怖を覚え、晩源の枕元に付き添って苦悩した。毒を断ち、確かな解毒の薬をませているのに、なぜ悪化してしまうのか。

お染は布切れに包んでおいたを取りし、灯の暗いので凝した。のい、粒の細かさ、微かな匂いを指先と腔で1つ1つ確かめていくうち、お染は息をのんだ。

毒は1種類ではなかったのだ。砒素のに、もう1種、別の珍しい毒の汁を乾燥させて混ぜわせてあったのである。

2つの毒が互いの効果を補いい、通常の解毒薬では破れぬようになっていた。お染が最初に用いた薬は砒素の毒だけを狙ったものだったため、もう1つの毒が体内に残り、源の体をさらに激しく痛めつけていたのだ。

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毒を制する者が毒を侮れば、かえってを殺めることになるという父の言葉をいし、お染は唇をく噛みしめた。

お染はその夜もせず、父が残した膨な処方箋をのにい浮かべ、2つの毒を同に打ち消して体へ排するたな処方をに物狂いでひねりした。

の空がみ始める頃、たな解毒薬を煎じげたお染は、源の元へ慎に含ませ、祈るようなで1を待った。

すると翌朝、だった源の顔に、ほんのわずかではあるが確かな血の巡りが戻り始めた。しい薬が功を奏し、2つの毒を同に解毒したことで体が本来の力を取り戻し始めたのだ。

お染は堵の息を漏らすと同に、2つの毒を絶妙な配分で混ぜわせる敵の底れぬ悪に気を引き締め直した。

そのから、源はしずつ活力を取り戻していった。湯をみ干す量が増え、眠りもく穏やかなものになり、気の失われていた肌に瑞々しさが戻り始めた。

敷の奉公たちはその劇な変化を目の当たりにして驚きを隠せなかった。

「おい、あれほどに瀕していた若旦様が、体どうしてあのように持ち直されたのだ」

「本当にな。名のある名医さえも匙を投げた病だったというのに」

宇兵はその様子を見ながられず嬉し涙を袖で拭い、この奇跡の裏にはあの物言わぬ嫁の献な助けがあるに違いないと確信をめていた。

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