"白いメットと二十二年の嘘" 第5話
「度?」
真奈美はクスッと笑った。そのややかな嘲笑に、浩之は言葉を失った。
「紗理奈さんとは、のから付きってるわよね。もうすぐになるじゃない。彼女のマンションの賃、毎万円ずつあなたが振り込んであげてる座番号も、調査報告に全部いてあるわよ」
浩之は完全に沈黙した。
もはやどんな言い訳も、どんな取り繕いも通用しないことを、彼の営業マンとしての嗅覚が悟ったのだろう。男はを抱え、テーブルに肘をついてうなだれた。
「……陸はってるのか」
絞りすようにた浩之の問いに、真奈美は静かに首を振った。
「今朝、陸が彼女とかけたのはね、私たちが話しうを作るためよ。陸には、私が今あなたに婚を切りすことだけは伝えてあるわ」
「な……陸にそんなこと言ったのか!? あいつは受験が終わって、やっと学活を楽しんでるんだぞ! 親のゴタゴタに巻き込むなんて、母親としてどうなんだよ!」
「父親として倫旅を繰り返して、息子の学費のために貯めていた座から毎万円をに横流ししていたが、母親の資格を語るの?」
真奈美の鋭い撃に、浩之はぐうの音もなくなった。
「陸はね」
真奈美は窓のに目を向けた。い空を眺めながら、しい息子の顔をい浮かべる。
「ずっと気づいていたのよ。
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あなたがまた誰かと浮気してること」
それは、ヶの夜のことだった。
浩之が「接待ゴルフ」と称して曜の朝くからかけ、真奈美がリビングで、ため息をつきながらアイロンがけをしていたのことだ。
学のサークルから帰ってきた陸が、珍しく蔵庫から缶ビールを取りし、真奈美の向かいのダイニングチェアに座った。
『母さん、もういい加減にしたら』
陸は缶のプルトップを引きながら、伏し目がちに言った。
『何が?』と聞き返す真奈美に、陸は静かに告げたのだ。
『親父のことだよ。またやってんだろ。のも、学のもそうだった。母さんが夜にで洗面所で泣いてるの、俺、何度も見てたよ』
真奈美はアイロンを持つを止めた。
胸の奥が焼き切れるような痛みがった。隠せていたとっていた。子供のでは絶対に涙を見せず、平気な母親を演じ切れていたと信じていたのだ。
『俺のためにしてくれたんだろ? 俺が学に入るまで、族の形を壊さないようにしてくれたんだろ? ……ありがとうな、母さん』
陸はビールを気に喉に流し込み、真奈美の目をまっすぐに見つめた。そこには、かつて父親の背に隠れて怯えていた幼いの面はなかった。
の自したの男の目がそこにあった。
『でもさ、もう俺、歳になるんだよ。
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自分の学費くらい、奨学とバイトでどうにかできる。だから母さん、もう親父の顔見てきるの、やめなよ。俺は母さんの方だからさ。母さんが婚したいなら、俺は全面に賛成するよ』
その夜、陸が部に戻った、真奈美は何ぶりかもわからないほど声をげて泣いた。
自分のを犠牲にして息子を守ってきたつもりだった。だが、実際には息子に気を遣わせ、痛みを分かち宿させてしまっていた。そして同に、息子のその言葉が、真奈美の首を縛り付けていたたい鎖を断ち切ってくれたのだ。
もう、する必はない。
こので、んだ魚のような目で夫の嘘に怯えながら暮らす々は、今で終わりにしなければならない。
探偵事務所のドアを叩いたのは、その翌週のことだった。
「陸が……そんなことを……」
浩之の声は震えていた。息子から向けられていた軽蔑と諦めの線に、今さらになって気づいたのだろう。
「陸はね、あなたのことをもうのとして軽蔑してるわ。でも、憎んではいないそうよ。『ただ、れなだとう』って言ってた」
「れ……俺が……?」
「そうよ。くにもなって、庭の定に甘えながら、若い女の子に遣いを握らせてチヤホヤされて、男としてのプライドを保っている気になってる。れ以の何物でもないじゃない」
「言い過ぎだろ!」
浩之がテーブルを叩いてちがった。湯呑みが倒れ、ぬるくなった緑茶がいクロスに広がっていく。