"4000円を頼んだ私に、死んだはずの父から4000万円" 第5話
その現実と、自分の座に眠る「40,000,000」という数字のあまりの乖に、目眩がした。
なぜ。どうして。
フライヤーの気ので、母の言葉が何度もを霊した。『あの男はんだのよ』『そのおだけは、絶対に使わないで』
母は、何を隠しているのか。そしてあの男は、なぜ今になって私のに現れたのか。
夜、アパートに帰り着き、静まり返った台所で、私はバッグからあの箔の封筒を取りした。には、ホテルのカードキーと、いが通。
そこには、震えるような達な墨文字で、たっただけかれていた。
『奈、すまなかった。度だけでいい、顔を見せてほしい』
私はを握りしめた。指先がくなるほど、く。
千万円に目が眩んだわけじゃない。豪の令嬢になりたいわけでもない。
ただ、母を縛りつけ、私から父親のを奪い、そして今になってで過を買い取ろうとしているあの男のにち、どうしても自分ので突きつけてやりたかった。
なぜ、私たちを捨てたのか。なぜ、今まで度も私を探しに来なかったのか。
私はスマートフォンをに取り、杉浦弁護士の番号へ、くメッセージを送信した。
『、伺います』
京駅にりった瞬、たいが頬を打った。
着慣れない紺のスーツは、量販のワゴンセールでに買ったものだ。
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袖の糸がしほつれていて、ので何度も指先で千切ろうとしては、やめた。元のパンプスも、ヒールが削れて歩くたびにカツカツとっぽい音をてる。
洲から徒歩数分。見げるほどくそびえつガラス張りの層タワーのにった、胃のあたりがきりきりと音をてて縮みがった。
『ホテル・クジョウ京』
巨な造りのエントランスには、黒塗りのハイヤーが音もなく滑り込み、ドアマンが々とをげている。回転ドアを抜けると、ふわりと品の良い檀のりと、温かな空気が肌を包んだ。元には、私の靴音を完全に吸い込むい絨毯。
制を着たコンシェルジュに名を告げると、表ひとつ崩さずに専用のエレベーターへと案内された。最階、特別。な真鍮のプレートが鈍くる扉ので、昨話をかけてきた杉浦弁護士がっていた。
「お待ちしておりました、梨様」
弁護士はく礼すると、音もなく扉を押しけた。
部のは、息を呑むほど広かった。壁面のパノラマウィンドウからは、の京のビル群が望できる。その窓を背にして、い革張りのソファに腰掛けていた老が、ゆっくりと顔をげた。
雑誌で見た写真よりも、ずっとさかった。
仕ての良いカシミヤのカーディガンを着ているが、そのにある体は驚くほど骨ばっている。
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首筋の皮膚は干からびたのようにく、頬はこけ、の髪だけが然と撫でつけられていた。末期の膵臓がん。弁護士の言葉が、その老いた肉体から々しく伝わってくる。
老は、震えるで膝ののブランケットを押し退け、ちがろうとした。だが、腰に力が入らないのか、さく息を漏らしてソファに沈み直す。
私と、その男の線が交差した。
、度も見たことのない顔。けれど、鏡のの自分と、どこか気なほどよく似た瞳の形。血の繋がりというたい事実が、肌を粟たせる。
老は、乾いた唇をかすかに震わせた。
「奈……きくなったな」
その掠れた声を聞いた瞬、胸の奥底から、たいりがせりがってきた。
「……歳です」
私の声は、自分でも驚くほどく、平坦だった。
「きくなったも何もありません。とっくにですよ」
老は、打たれたような顔をして言葉を詰まらせた。気まずい沈黙が、なスイートルームの空気を凍りつかせる。杉浦弁護士が目配せをし、控えていたホテルのスタッフと共に、音もなく部をてった。
広い部に、以れていた「父」と「娘」のきり。
「座りなさい。ち話も何だろう」
老は向かいのソファを指差した。私は座らなかった。革の匂いがにつき、そこに腰をろしてしまえば、この男のルールにみ込まれるような気がしたからだ。