"4000円を頼んだ私に、死んだはずの父から4000万円" 第2話
最の入履歴。確かに、今から分、私の普通預座に千万円が着している。
そこに印字されていた振込名義は、カタカナでこう記されていた。
振込:クジョウ マサタカ
条、正隆。
誰?親戚にも、勤め先にも、私のりいにそんな層な名のはもいない。
「悠、でかけ直す!」
夫の返事も待たずに通話を切り、私はちがった。がもつれて台所のゴミ箱に膝をぶつけたが、痛みすらじなかった。襖を乱暴にけ、母が眠る布団の脇に滑り込む。
「お母さん。お母さん、起きて!」
「……ん……奈? どうしたの、声して……」
母がおぼつかないつきで体を起こそうとする。私はスマートフォンの画面を母の目のに突きつけた。
「この名、ってる!? 私の座に、いきなり千万円振り込まれたの。悠じゃないの。クジョウマサタカって……誰なの!?」
母の線が、青くる液晶画面に落ちた。
その瞬。
母の顔から、さっと血の気が引いた。のように真っになったかとうと、次の瞬には、これまできてきて度も見たことがないほどの激しいりと憎悪が、老いた顔の皺を歪めた。
母は震える両で私のスマートフォンをひったくると、力任せに敷布団のへ叩きつけた。
「お母さん!?」
「使っちゃいけない!」
母の枯れた喉から、空気を引き裂くような叫び声ががった。
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激しく喘ぎ、胸を押さえながら、狂気配を帯びた瞳で私を睨みつける。
「そのおは……円たりとも、触っちゃだめ! 絶対に使わないで!」
母の指先が、私の首にい込むほどく掴まれた。たくて、骨と皮ばかりのが、激しくガタガタと震えている。
「お母さん、落ち着いて、臓に障るから……! 誰なの? この、誰なのよ!?」
私の問いに、母は唇をわななかせ、呼吸を荒げながら、吐き捨てるように言った。
「……あなたのお父さんよ」
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が、完全に止まった。
の奥で、キーンという属音が鳴り響く。
「……お父さん?」
自分のからた単語が、まるで国の言葉のように馴染まない。
「嘘でしょう……? お父さんは、私が物つくに病気でんだって……お母さん、そう言ってたじゃない」
学の頃、お盆のたびに母にを引かれてったさな寺の納骨堂。「ここにお父さんが眠ってるのよ」と線をあげさせられた、あの暗い記憶。参観や運会で父親の姿がないたび、「うちはお父さんがくにくなったから」と自分に言い聞かせてきた、余りの歳。
そのすべてが、元から音をてて崩れ落ちていく。
「あの男はんだのよ。私にとってはね」
母は荒い息を吐きながら、え切った布団のに顔を伏せた。肩が細かく波打っている。
「お願いだから、これ以何も聞かないで。そのおは、返しなさい。
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あの男と関わったら、ろくなことにならない……!」
「返すって、どうやって!? 連絡先もらないのに!」
母はもう何も答えなかった。堅く目を閉じ、両でを塞ぐようにして体を丸めてしまう。額には脂汗が滲み、荒い呼気だけが狭い寝に響いていた。
それ以問い詰めることは、母の脆い臓を直接握り潰すのと同じだった。
私は台所へ戻り、布団のに放置されたスマートフォンを拾いげた。画面の保護フィルムには、母が叩きつけた拍子に細い亀裂が入っていた。そのヒビの奥で、40,000,000という無質な数字が、嘲笑うようにり続けている。
その夜、悠がからんで帰ってきた。油の染みついた作業着のまま、卓の子に座り、私の座残と振込名義を穴がくほど見つめた。
「警察に届けるか?」
夫の最初の言葉はそれだった。
「誤送なら、にをつけたら犯罪になる。に組み戻しの続きを頼めば……」
「違うの」
私は首を横に振った。指先がたく張っていくのをじながら、母から聞いた言葉を絞りした。
「お母さんが……私の、本当の父親だって言ったの」
悠は絶句した。画面の割れた携帯を握りしめたまま、秒以も言葉を失い、やがて線を落とした。
「……んだって、聞いてたよな」
「うん。私も、そう信じてきてきた」
台所の換気扇が、油切れの鈍い音をてて回っている。
夫は何も言わず、自分の財布から皺くちゃの千円札を枚取りし、卓のに静かに置いた。