"妻の浄水器は粗悪品、義母のキッチンには84万円" 第13話
「……母さん」
夫は助けを求めるようにスマートフォンを掴み取った。
母親が自分を弁護してくれる、母親に「美が変なことを言っている」と愚痴をこぼせば、いつものように方になってくれる。
そう信じ切っている浅ましい景が、その怯えた瞳から透けて見えた。
「ほら見ろ、母さんからだ! 母さんもおの無礼にってるに決まってる!」
夫は勝ち誇ったような歪んだ笑みを浮かべ、通話ボタンを押した。
そして、私に見せつけるように、画面の『スピーカー通話』をタップした。
「もしもし、母さん! 悪かったね、さっきは仕事でられなくて。美のやつが勝に押しかけて、変なこと言っただろ? あいつはヒステリーを起こしてて……」
『浩』
受話器の向こうから響いてきたのは、夫が期待したような甘やかす声ではなかった。
く、たく、りで極限まで張り詰めた、義母の震える声だった。
『……おというは、いつからそんな浅ましいケダモノに成りがったんだい』
夫の言葉が、喉の途で凍りついた。
「……え? 母さん……何言って……」
『美さんが帰ったあと、私はね、あの計簿のコピーを何度も何度も読み返したよ』
義母の声が、スピーカーを通じてリビングに響き渡る。
それは、母がが子に向ける声ではなかった。
世体を何よりもんじ、筋の通らないことを何よりも嫌ってきた、厳格なの老女の断罪の声だった。
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『美さんの元を見たかい、浩? 靴底が擦り切れて、敷きがびしたあのスニーカーを見たかい? あの子が毎、油煙のでを腫らしながら働いてる姿を、おは度でもまともに見たことがあるのかい!?』
「母さん、あれは……美がげさに言ってるだけで……」
『黙りなさい!』
を塞ぎたくなるようながんだ。
『スーパーの見切り品のシールを貼った計簿の横で、おは私に何をした? 「業績がいいから」「任せておけ」って言って、万のキッチンを押し付けて、い浄器をつけて……! 美さんにプラスチックの削りカスをませてまで持ってきたで、私がぶと本気でってたのかい!?』
「ち、違うんだ、母さん! 俺はただ、母さんに楽をさせてやりたくて……親父の分まで、男として派に……」
『派!? どこが派なんだい!』
義母が話の向こうで、嗚咽混じりに叫んだ。
『嫁の料を巻きげて、嫁の病院通いすらケチって、自分の見栄のために母親にをばら撒く男が、派な男なもんかい! けない! 恥ずかしいよ浩! 私はね、所のたちに「息子がキッチンをリフォームしてくれた」って自した自分が、恥ずかしくてにそうだよ!』
夫の顔から、完全に表が抜け落ちた。
いたが塞がらず、袋をしたのようにスマートフォンを持つがガタガタと震えている。
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『私は番で、リフォーム会社に話して契約を解除するよ。違約がかかろうが何だろうが、私の預から払って、あのキッチンは元のボロい流し台に戻させてもらう!』
「や、やめてくれ母さん! 違約なんて払ったら損だ! 所のもあるだろ!?」
『所のだと!? おが気にしてるのは、母親の体じゃなくて、自分の世体だけじゃないか!』
義母の徹な言葉が、夫の臓を正確に刺し貫いた。
『これ以、私をダシにして美さんをいじめるのはおやめ。そんな汚いで買われた親孝なんて、円たりとも受け取らないよ。……度と、私の敷居を跨ぐんじゃないよ、この親孝者が!』
ブツン。
通話が切れた。
ツー、ツー、ツーという無質な子音だけが、エアコンのに乗ってリビングに響き渡る。
夫は、スマートフォンを握ったまま、のように固まっていた。
その顔には、先ほどまでの傲さも、見栄も、黒柱としての威厳も、欠片ほども残っていなかった。
あるのは、番守りたかった母親からの完全な拒絶によって、精神の背骨をへし折られた男の、無惨な抜け殻だけだった。
私は、ゆっくりと子からちがった。
そして、テーブルの央に置いてあった類――『計管理および活費分担に関する』を、夫の目のに滑らせた。
「浩さん。
現実を見なさい」
夫はピクリと肩を揺らし、恐る恐る線を類へ落とした。