"妻の浄水器は粗悪品、義母のキッチンには84万円" 第4話
賞期限が今までの豆腐、し茶く変したモヤシ、脂ばかりの豚こま切れ肉。
度使った緑茶のティーバッグは、皿に置いて回はお湯を注ぎ直した。
友から「久しぶりに梅田でランチでもしない?」とLINEが来ても、「最パートのシフトが忙しくて」と嘘をついて断り続けた。
千円のランチコースをべる自分が、まるで庭を裏切る罪であるかのようにえて、恐ろしかったからだ。
すべては、夫の言う「計が苦しい」「老が危ない」という言葉を信じていたから。
夫婦でを取りって、苦しい代を乗り越えているのだと信じ切っていたからだ。
それなのに。
「……母さんのところだよ、あっちが先だろ」
の奥で、夫の淡な声が霊する。
万千百円の正規品は、迷うことなく義母のむ公団宅へ運ばれ、
がのキッチンには、カッターで削られた粗悪なゴミが押し込まれていた。
千円の仕事靴を「無駄遣いだ」と切り捨て、
妻にプラスチックの削りカスが混ざったをヶませておきながら、
夫は「たかが数千円のことでヒステリーを起こすな」と言い放ったのだ。
「……っ」
声にならない嗚咽が、喉の奥から絞りされた。
涙はなかった。
ただ、胃袋のあたりが激しく痙攣し、たいりと屈辱が、どす黒い波のように全を侵していく。
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私はちがり、ふらつく取りでリビングへ向かった。
テレビ台の引きしの奥から、、も欠かさずに記録し続けてきた数冊の「計簿」を取りした。
テーブルのに、ごとの黒い学ノートを並べる。
いたページには、几帳面な私の文字で、々の数字がびっしりとき込まれていた。
費、用品費、費、代。
夫から毎渡しされる「活費」は、きっちり万円だった。
そこから費、雑費、私のパート通勤のガソリン代、医療費までをすべて賄わなければならなかった。
りないは、私の個名義の独代の貯から、数千円ずつ補填していた。
それもすべて、ノートの余に赤ペンで「今赤字、私財産より3,000円繰入」と几帳面にメモしてある。
ページをめくっていく。
の。私の歳の誕。
ずっとってみたかった、駅のし評判のいいカジュアルフレンチのディナー。
予約の話をかけようとした、夫に言われたのだ。
「悪いけど美、今は会社の営業経費のて替えがくて持ちがないんだ。はまた余裕があるにしてくれないか」
ノートの余には、鉛のい文字でこう残されていた。
『誕ディナー止。でオムライス。次回、活に余裕ができたに』
その「次回」は、今までの余り、度たりとも訪れなかった。
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の。
健康診断の再検査通。
便潜血の検査で引っかかり、腸カメラの精密検査を勧められた。
検査費用は約千円。
夫に相談すると、「症状もないのに千円もかけてカメラを入れる必あるか? 医者の儲けに付きうなよ」と笑いばされた。
私は病院の予約をキャンセルし、ノートの端に『体調変化なし、再検査は見送り』とき込んだ。
の。
代の親友であるから誘われた、泊の馬温泉旅。
積として万円が必だった。
「結婚して、たまには息抜きしておいでよ」と言ってくれたの言葉が嬉しくて、夫におずおずと切りした。
返ってきたのは、氷のようにたい侮蔑の差しだった。
「俺が毎残業して必に働いてるのに、おは温泉か? そんながどこにあるんだよ。自分のってものをしは考えたらどうだ」
私は泣きながらに断りの話を入れ、ノートの旅計画の文字を、黒いサインペンで線で塗りつぶした。
諦めた。
諦めて、諦めて、削って、削って。
自分の健康も、友関係も、ささやかなびも、すべて「うちにはおがないから」という呪文のに埋葬してきた。
そうやって私が削り取ってきた命の欠片は、体どこへ消えていたのか。
「……ただいま」
夜の過ぎ。
玄関のドアが乱暴にく音がした。
革靴を脱ぎ捨てる音、いブリーフケースがに放りされる音がリビングまで届く。