"妻の浄水器は粗悪品、義母のキッチンには84万円" 第2話
画面をタップする指先が、刻みに震えて止まらない。
発信ボタンを押す。
呼びし音がの奥で、無質に、暴力なきさで響き渡った。
ツーツーという乾いた子音が回続いたあと、ブツリと接続される音がした。
『……もしもし。何だよ、美。今、得先回りの途なんだけど』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、し苛った、いつもの夫の声だった。
周囲をるの音がかすかに混ざっている。
「浩さん、今、浄器の点検のが来てるの」
できる限り声を平に保とうとしたが、語尾がどうしても震えた。
『は? 点検? お、また勝に呼んだのかよ。朝も言っただろ、なんて普通にてりゃ問題ないんだって。点検代だってタダじゃないんだぞ』
番、投げつけられたのは舌打ち混じりの叱責だった。
いつもなら、「ごめんなさい、でもが悪かったから」と謝っていただろう。
波をてないことが、染みついた私の処世術だったからだ。
けれど、今は引けなかった。
目のにある、削りカスまみれの黒ずんだフィルターが、私を許さなかった。
「が悪かったんじゃないの。に入ってたカートリッジ、うちのメーカーの正規品じゃなかった」
話の向こうの気配が、ぴたりと止まった。
さっきまで聞こえていた夫の荒い息が、瞬だけ途切れる。
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「……何言ってんだよ」
「作業員さんが見せてくれたわ。サイズもってない、カッターで無理やり削ったの粗悪品が入ってたって。隙からプラスチックの破片が漏れて、に混ざってたのよ」
『…………』
「浩さん。先届いたはずの、万千円の純正フィルターはどこにあるの? あなたが自分で交換するって言って、部に持ってったあの青い箱は、どこへったの?」
シンクに落ちるの、ポタ、ポタという規則正しい音だけが、異様にきく響く。
夫はすぐには答えなかった。
話越しに、唾をみ込むようなさな音が聞こえた。
数秒の沈黙の、夫はふっと息を吐き捨て、き直ったようなく太い声をした。
『……あっちだよ』
「あっちって、どこ?」
『母さんのところだよ。あっちの団、配管が古くてサビがるって言ってただろ。寄りにあんな濁ったませられるわけないじゃないか。だから持ってって、俺が取り替えてやったんだよ』
当然のことをしたまでだ、と言わんばかりの平然とした調だった。
「……お義母さんのところに?」
『そうだ。母さんは暮らしだし、だってもとないんだから、俺たち現役世代が気を使ってやるのが当たりだろ』
「じゃあ、うちのこれは? うちのキッチンに入ってた、この削られたゴミみたいなものは何なの?」
私の声が、図せず裏返った。
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田さんが気まずそうに目を伏せ、具箱の片付けを始めているのが界の端に見える。
夫は話の向こうで、底うんざりしたように声を荒らげた。
『ゴミとは何だ、聞きの悪い! 俺がネットで互換品を探して、わざわざサイズ加して取り付けてやったんだよ! かけてやったのに、何が満なんだ?』
「満とかそういう問題じゃない! サイズがってないから削りカスがに混ざってたって言ってるの! こので毎お米を研いで、お茶を沸かして……私はそれをヶもんでたのよ!?」
『げさなんだよ、おはいつも!』
鼓膜を突き刺すような鳴り声が返ってきた。
『削りカスくらいでぬわけじゃないだろ! なんてめりゃ何だって同じなんだよ! 母さんの体調を気遣う優しさも持てないのか? たかが数千円、万円やそこらのことで仕事にいちいちヒステリー起こして話してくるな!』
たかが数千円。
万円やそこら。
その言葉を聞いた瞬、私のので何かが音をててちぎれた。
「たかが……?」
『そうだろ! 俺がでどれだけ神経すり減らして稼いでるとってんだ! 母親にちょっといいませてやっただけで犯罪者みたいに責めてやがって。所迷惑だからので喚くんじゃないぞ。帰ったら話すから、もう切れ!』
方に通話が遮断された。
ツーツーという無質な切断音が、の奥に残り続ける。
私はスマートフォンの画面を握りしめたまま、そのから歩もけなかった。