"「次男にこの家を譲ります」義母が宣言したのは私名義の家だった" 第16話
「美咲!!」 夫が叫び、ちがろうとした。 「やり直せないのか!? 俺が悪かった! 全部反省するから、もう度だけチャンスをくれよ!!」
私はを止め、振り返った。 そのれな男の目を、まっすぐに見据えて告げた。
「信頼を壊したのは、おの問題じゃないわ」
夫が息を呑む。
「私が断ると分かっていて、あなたが周りを巻き込み、私から『拒絶する権利』を奪おうとしたことよ。……自分の妻を、対等なとして扱わなかったあなたを、私は度と信用しない」
それ以、何も言わなかった。 背で崩れ落ちる夫の泣き声も、茫然自失の義母の溜め息も、すべて会議のい防音扉の向こうに残して。
私は、の澄んだが差し込む廊へと、迷いのない取りで踏みしていった。
法律事務所のエレベーターホールに滑り込むと、背でな扉が静かに閉まった。
階から階へと急速にりていく浮遊の、私はエレベーターのステンレス壁に額を押し当てた。 たい属の触が、を持ったこめかみをやしていく。
喉の奥が、まだ乾いている。 指先はえ切ったままだ。 けれど、呼吸は驚くほどくなっていた。
、私の肺を圧迫し続けていた「良き妻」「物分かりのいい嫁」という名の見えない鉛が、いま完全に溶け落ちたのだと分かった。
ビルをると、横浜のには夕暮れのたいが吹き抜けていた。
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本通りへ向かう歩をき交う々は、みなにを急いでいる。
コートのポケットので、スマートフォンが執拗に震え続けていた。 画面を見なくても分かる。 夫――健太からの着信だ。
度ち止まり、画面をタップして通欄をいた。 件以の着信のに、LINEのメッセージが濁流のように並んでいる。
『美咲、頼むから話にてくれ』 『母さんもさっきの態度を反省してる。あそこまで言うつもりはなかったんだ』 『婚なんて冗談だろ? 俺たち、も緒にやってきたじゃないか』 『連帯保証のことも、ちゃんと俺の料から返す計画をてるから。やり直そう、美咲』
画面の文字をスクロールしながら、私のにはさざ波つたなかった。
「反省している」 「あそこまで言うつもりはなかった」
まだ分かっていないのだ。 あのたちは、自分たちの悪が暴かれたことに狼狽しているだけで、私の尊厳を蹴にした罪のさなど、ミリも理解していない。 もし私が今、弁護士をてずにで料亭の追及に耐えていたら、今頃あのは担保に差し入れられ、私は「藤澤の恩恵に預かる居候」として扱われていたはずだ。
私は夫の番号を通オフにし、メッセージのバックアップを顧問弁護士の梨先のメールアドレスへ転送した。
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返信はしない。 を交えた言葉を言でも返せば、あの男はそこに「妥協の余」を見そうとする。
これからの会話はすべて、徹な法と契約面のみでう。 それが、私自を守るための唯の防壁だった。
ウィークリーマンションでの活が週を過ぎた頃、梨先から本の連絡が入った。
「美咲さん、相方の代理弁護士から連絡がありました。健太さん、ようやく現実を受け入れざるを得なくなったようです」
受話器の向こうで、梨先が淡々と類をめくる音がした。
亮介のの清算と縮は、待ったなしでんでいた。 輸入用の精度フレーム修正とテスターは、先週曜にリース会社によって完全に引き揚げられた。 残された千百万円のリース残債と遅延損害について、リース会社は主債務者の亮介だけでなく、連帯保証である健太に対しても、正式な「期限の利益喪失」と括請求の法続きを始したのだ。
夫の会社にも、裁判所からの支払督促の気配が迫っていた。 設備販売会社の営業課という肩は、個の連帯保証債務からは何つ守ってくれない。 もし与の差し押さえが入れば、会社での世のは完全に閉ざされる。
「健太さんは個再、あるいは任理の続きに入らざるを得ない見込みです。
親族にをげて回ったようですが、料亭での件が尾を引いており、誰として資を用ててくれる者はいなかったとのことです」