"「次男にこの家を譲ります」義母が宣言したのは私名義の家だった" 第5話
私の叫びに、夫は息を呑み、忌々しそうに踵を返して隣のの襖を乱暴に閉めた。
残されたダイニング。 蛍灯のいので、私は両で顔を覆った。 呼吸をするたびに、胸の奥がひりひりと痛む。
全部、嘘だったのだ。 の善も、族の絆も。 彼らにとって、私の持ち物も、私の優しさも、都よく消費できる「藤澤の共財産」に過ぎなかった。
そのだった。
ブルルッ、と静まり返ったリビングに、スマートフォンのバイブレーションが響いた。 テーブルの端に置かれた画面が、青くっている。
メッセージの差は、義弟の亮介だった。
こんな夜に、体何だというのか。 め切った指先で画面をタップし、メッセージをいた。
そこに並んでいた文面を読んだ瞬、私の臓は、完全に凍りついた。
『義姉さん、急にメッセージしてすみません。昼のこと、本当にごめんなさい。でも、頼みます。来週曜、部品商社と設備リース会社に、あのが担保に入らないってことだけは、絶対に言わないでください。もう話を通してあって、の担保を提に支払いを待ってもらってるんです。今それが嘘だってバレたら、うちの、来週には差し押さえられて本当に終わります』
画面の文字が、歪んで見えた。
……は? もう、話を通してある? の担保を提に、支払いを待ってもらっている……?
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庭内の競りいなどではなかった。 私のらないところで、私のはすでに、赤ののビジネスの「抵当」として、勝に差しされていたのだ。
息が止まりそうだった。
暗にるスマートフォンの画面を、何度も指でなぞる。
の反射で、自分の青ざめた顔が黒いガラスに歪んで映り込んでいた。
『来週曜、部品商社と設備リース会社に、あのが担保に入らないってことだけは、絶対に言わないでください』
『もう話を通してあって、の担保を提に支払いを待ってもらってるんです』
喉の奥が引き攣る。
胃の底に、鉛を流し込まれたようない吐き気が競りがってきた。
……取引先に、もう話を通してある?
の担保を提に、支払いを猶予させている?
夜分。
隣のからは、夫の規則な寝息が聞こえてくる。
妻を欺き、の資産を勝に差しす算段をつけておきながら、あの男はこの期に及んで眠れているのだ。
指先がたく張るのを無して、私は亮介の話番号をタップした。
呼びし音は、回も鳴らなかった。
待ち構えていたように、通話が繋がる。
「……あ、義姉さん」
掠れた、震える声だった。
川崎のの片隅で、を抱えて震えている義弟の姿が目に浮かぶようだった。
「亮介さん」
私はを極限まで押し殺し、く、い声で告げた。
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「メッセージ、読みました」
「あ、ありがとうございます……! 本当にすみません、こんな夜に。でも、俺、本当に追い詰められてて……」
「言い訳はいいから、質問に答えて」
相の言葉を容赦なく遮った。
「あなたが話を通した相は、具体にどこの誰? そして、私のについて、体何と言ったの?」
話の向こうで、亮介がひっと息を呑む音が聞こえた。
「え、それは……」
「誤魔化さないで。私は会計事務所をやっているの。事業の資繰りがどういうものか、あなたが今どれほど危険なを渡っているか、全部理解したで聞いているのよ」
「……川崎の、産業械リース会社と、自部品の専商社です」
亮介は観したように、途切れ途切れに状し始めた。
、の拡張に伴って導入した輸入用の精度フレーム修正とテスター。そのリース料、額万円。
さらに、毎の仕入れ代。
昨末からの備案件がて続けにび、支払いがヶ滞納していた。
「先週の曜に、商社の回収担当から最終通告が来たんです。『週けの曜までに確実な担保の差し入れか、追加の保証がつかなければ、械の引き揚げと売掛の仮差押えに入る』って……」
「それで?」
「俺、パニックになって、兄貴に相談したんです。そしたら兄貴が……『母さんがんでる横浜のがある。あれを担保に入れられるよう、母さんと俺で美咲を説得するから、話を通して待ってもらえ』って……」
血の気が、完全に引いた。