みかん小説
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"「お母さんのところに行きたい」9年後に届いた娘の声" 第12話

その叫びを聞いた瞬、私の界も完全に涙で塞がれた。

「結……」

私はテーブルを回り込み、結の肩を抱きしめた。

結のを、私の胸に引き寄せる。 細い肩が、子供のように激しくしていた。 私のエプロンに、結の涙がぐんぐんと染み込んでいく。

「ごめんね……ごめんね、結」

私は結の背を、何度も何度もさすった。

「私も、ずっと会いたかった。 だって、結のことを忘れたなんてなかった。 寂しいいをさせて、本当にごめんね……」

「お母さん……お母さん……っ」

結は私の背にを回し、を力いっぱいに握りしめてきた。 そのさは、歳のあの、ので「お母さんのところにきたい」と泣き叫んでいた女の叫びそのものだった。

の空が、消えてなくなったわけではない。 私たちが失った青も、運会も、成式も、度と戻ってはこない。

けれど、いま胸のにあるこの温もりだけは、本物だった。 どんな嘘も、どんな悪も、私たちが分けったこの血の通った記憶を、消しることはできなかったのだ。

母と娘の泣き声が、静かな内にいつまでも響いていた。

結が皿のの料理を全部平らげた頃には、の通りは夕暮れのオレンジに染まっていた。

のを赤くした結は、温かい緑茶を両で包み込みながら、し照れくさそうに笑った。

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「全部べちゃった。お腹いっぱい」

「よかった。おかわりも作れたのに」

「もう入らないよ」

ふふ、とで顔を見わせて笑った。 こんなに笑いえるが来るなんて、週には像すらできなかった。

結はバッグを持ち、ちがった。

「美しかった。ごちそうさまでした」

「気をつけて帰るのよ。埼玉までいんだから」

「うん。……あ、お母さん」

ドアノブにをかけた結が、くるりと振り返った。 その顔には、先ほどまでの涙の跡はなく、女のような悪戯っぽいが宿っていた。

「来週の曜、また来てもいい?」

「ええ、もちろん」

「私に、あの卵焼きの巻き方、教えてよ。 自分で作っても、いつもボロボロになっちゃうの」

私は瞬だけ目を見張り、それから、今番の笑顔で頷いた。

「いいよ。何本でも、に焼けるまで教えてあげる」

「約束ね」

結は嬉しそうにを振り、ドアベルを涼やかに鳴らしててった。

ガラス越しに見送る娘の背は、もう痛々しく曲がってはいなかった。 夕暮れのを、自分のでしっかりと踏みしめて歩いていく。

私は胸にを当て、く、い息を吐きした。 、え切っていた私のが、今、確かに音をててきしていた。

片付けをしようとテーブルに戻った、エプロンのポケットのでスマートフォンが震えた。

取りして画面を見ると、ショートメッセージが届いていた。

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差は、誠さんだった。

画面をタップして、メッセージをいた。

『真紀さん、突然すみません。 結ちゃんから連絡がありました。 兄貴と話をつけて、鍵を置いててきたと聞きました。 兄貴は俺の携帯にも鳴り込んできましたが、もう構いません。 真紀さん、本当にありがとうございました。 俺は、このをて、別の所で雇いの仕事を探そうといます。 最に言だけ、お礼を言いたくてメッセージを送りました』

指先がたく張った。

をる? 所持は、私が渡した万円のうちの万円と、銭のわずかな銭しかないはずだ。 その体で、あかぎれだらけので、また別ので野宿をしながら空き缶を集めるつもりなのか。

あの男が犯した罪はい。 、結のを奪い、録音を隠し、私と娘のを奪いった共犯者だ。 許せるはずもないし、許す筋いもない。

だが、あの夜、たいので震えながら万円を返してきた男の姿が、網膜に焼き付いてれなかった。 このまま野垂れにさせることが、結のためになるとは到底えなかった。

私はすぐに返信を打った。

『逃げないでください。 、に板区役所ので待っています。 来てください。話があります』

翌朝の。 区役所の広は、たいが吹き抜けていた。

くの植え込みのに、を縮こまらせたが見えた。 誠さんだった。

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