みかん小説
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"「お母さんのところに行きたい」9年後に届いた娘の声" 第5話

のにあるの録音を、指先で何度もなぞる。

歳の結の泣き声が、の奥かられなかった。

連絡があったのは、の夜だった。

スマートフォンの画面に、見らぬ番号からショートメッセージが件届いていた。 差の名はない。

本文をくと、たっただけ、文字が並んでいた。

『度だけなら、話してもいい』

臓がきくねがり、呼吸が止まりそうになった。

返信を打つ指が、激しく震えた。 何を言えばいいのか。謝るべきか、していると伝えるべきか、それとも父親の嘘をすべて暴するべきか。

打っては消し、消しては打ち直した。 をぶちまけてしまえば、あの子は度と私に言葉を返してくれない。 になった結の尊厳を、度と傷つけてはならなかった。

以かけて、私はい文章を作った。

『結、お母さんです。連絡をくれて本当にありがとう。 急にこんなことになって、混乱させてごめんなさい。 も経ってしまって、何から話せばいいのか分からないけれど、結の今の気持ちを、番に聞きたいとっています』

送信ボタンを押したあと、画面を見つめたまま息を潜めた。

分が過ぎ、分が過ぎた。 付が変わる直、震えとともに画面がった。

そこにかれていた言葉を見た瞬、目のが真っ暗になった。

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『どうして、私が18歳になったにも連絡してくれなかったの?』

喉の奥が引き攣れた。 痛烈な問いだった。

歳ので「もう連絡しないで」と言われてからも、私は度だけ、禁を破ったことがあった。 結がを卒業し、歳になったのだ。 成齢の引きげや活のニュースを目にするたび、胸が張り裂けそうになり、埼玉の元夫の実宛てに、お祝いのメッセージカードと現留を送っていたのだ。 携帯の番号宛てにも、おめでとうといメールを打った。

だが、現留は「宛所」で戻ってきた。 メールも「宛先が見つかりません」というエラー通でね返された。 その、修司たちがを売り払ってどこかへ引っ越し、結の番号も解約されていたことを、私はらなかった。

『あの子は、本当に私との縁をすべて断ち切りたかったんだ』 そうい込み、私はそれ以の捜索を諦めてしまったのだ。

私は画面に向かって、震える指で返事を打った。

『歳の、埼玉のにとお祝いを送ったの。でも、宛先で戻ってきた。携帯の番号も繋がらなくなっていた。 探そうとえば、民票を追うこともできたのかもしれない。 でも、歳のに結からもらったをいして……本当に私を拒絶しているんだとって、怖くて踏み込めなかった。

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言い訳にしかならないよね。本当にごめんなさい』

送信したあと、画面を伏せて両で顔を覆った。 あの子は、歳の誕にも、私を待っていたのだ。 拒絶のをいた自分を、母親がそれでも探ししてくれるのを、どこかで願っていたのだ。

数分、い通音が鳴った。

『……私も、ずっとそうってた。お母さんは私のことなんて、もうどうでもよくなったんだって』

つの異なるい込みが、というので、たい壁になってを隔てていた。 その壁に、初めてさな亀裂が入った瞬だった。

『曜の午、神保町の喫茶で』

指定された名とだけが、最に送られてきた。

約束の曜。 私は約束の分に、神保町にある古い純喫茶に到着していた。

へ続く階段をりると、琥珀の照の、静かなジャズがく流れている。 奥のボックス席に腰をろし、コートを脱いだ。

膝のに置いたバッグのには、つのものが入っていた。 あの届いた古い録音。 誠さんから速達で送られてきた、の結のが通。 そして、私が、捨てられずに保管していた冊のスケジュール帳だった。

帳の表を撫でると、指先が微かに震えた。

階段から、コツコツとい靴音が響いてきた。 顔をげる。

入の扉がき、の女性がっていた。

黒いウールのロングコートに、えられたショートヘア。 脇には仕事用としき革のトートバッグを抱え、周囲を警戒するように見回している。

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