"姉の身代わりで謝罪したら「最初からあなたをご指名です」" 第19話
テーブルのの契約を乱暴にひったくり、私の目ので破り捨てようと両に力を込める。
「ふざけんんじゃないわよ! こんな切れ、破いてやるわ! あんたは松本さんと結婚して、このにおを入れなきゃいけないの! 勝にていくなんて許すわけないでしょうが!」
「原本は産にあるから、それを破いても無駄だよ」
私がたく言い放つと、母のがピタリと止まった。 その顔は、今やりと恐怖で醜く歪んでいた。
「親孝者! 恩らず! 誰のおかげでここまできくなれたとってんのよ! お父さんの健康管理はどうするの!? このの掃除や洗濯は誰がやるのよ!?」
どこまでも、自分のことばかり。 最まで、私のを気遣う言葉は言もなかった。
「お父さん」 私は、呆然とをけている父を見つめた。 「自分の健康管理は、自分でやって。お父さんはまだ歳で、どこも悪くないんだから」
「奈緒……お……本気なのか……?」 父の声がけなく震える。
「本気だよ。分の恩返しは、これまでの事と活費で、とっくに払い終えたとってる」
「許さないわよ!」 母が切り声をげ、私の腕を掴もうと爪をてて伸ばしてきた。
そのだった。
ピンポーン。
静寂を引き裂くように、玄関のインターホンが澄んだ音をてて鳴り響いた。
聞配達でも、郵便受けの音でもない。
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朝の過ぎ。 こんなに訪ねてくるなど、いるはずがなかった。
「……誰よ、こんな朝っぱらから!」 母が苛ちをわにして叫んだ。 「どうせまた親戚がお祝いでも持ってきたのよ! 奈緒、あんた逃げるんじゃないわよ、話は終わってないんだからね!」
母はドタドタと音を荒てて廊へ向かい、乱暴に玄関の引き戸をけた。
「はい! どなたですか!」
気を含んだ母の声。
その直、け放たれた玄関から聞こえてきたのは、凛とした、く落ち着いた男性の声だった。
「朝くに突然押し掛けまして、変失礼いたします。野県曇野から参りました、松本悠真と申します」
リビングの空気が、完全に凍りついた。
母の息を呑む音。 父が弾かれたようにちがり、子がを擦って甲い鳴をげた。
朝の清冽なが差し込む玄関のたたきにっていたのは、仕ての良いダークスーツにを包み、革のビジネスバッグをにした松本さんだった。
「……ま、松本さん……?」
母のから、抜けな裏返った声が漏れた。
玄関のたたきにつ松本さんは、仕てのいい濃紺のスーツを乱れなく着こなし、には黒いブリーフケースを持っていた。 朝の気をまとったその佇まいは、活で埃っぽいがの玄関とはまるで異質な、凛とした気配を放っている。
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「朝くに失礼いたします。昨晩、宮の取引先との会がありまして、こちらの方に泊しておりました」
松本さんはく、丁寧にお辞儀をした。
「奈緒さんから昨夜、今朝くにご実をられると伺いました。い荷物もあるだろうとい、勝ながら駅までおでお送りできればと、ち寄らせていただいた次第です」
静かな、けれど芯の通った声だった。
母の顔が、りの赤から急速に引きつった笑顔へと塗り変わっていく。 その骨な変化に、見ていた私の背筋が寒くなるほどだった。
「ま、まあ! 松本さん! わざわざ曇野から……いえ、宮から来てくださったの!? いやだわ、こんな散らかった玄関先で! どうぞ、どうぞがってくださいな! 奈緒、何突っってんのよ、くお客様にお茶をおししなさい!」
母が私の腕を掴もうとを伸ばす。 けれど、松本さんは靴を脱ぐ素振りすら見せず、玄関の框のでぴたりとを止めた。
「いえ。突然の躾な訪問ですので、ここで結構です。それより、お父様とお母様に、どうしても直接お伝えしておかなければならないことがありまして」
物音を聞きつけて、リビングから父がりでてきた。 履き古した靴のまま、ペコペコと腰を折る。
「あ、松本さん……初めまして、父親の隆夫です。いやあ、いところわざわざ……娘がいつもお世話になって……」
「初めまして、川様。松本果実芸の、松本悠真と申します」
松本さんは父に対しても完璧な礼儀正しさでをげた。