"姉の身代わりで謝罪したら「最初からあなたをご指名です」" 第13話
、実の台所で、母と姉から浴びせられ続けてきた言葉が、突然フラッシュバックのように脳裏を駆け巡った。
松本さんの顔を見る。 彼の表には、悪など微もない。 純粋な好と、私への謝と、未来への期待だけが浮かんでいる。
分かっている。 彼が実の族のように、私を搾取しようとして言ったのではないことくらい。
けれど。
私のにく刻まれた傷が、その何気ない言で、鋭く疼いてしまったのだ。
このは、私というを見てくれているのだろうか。 それとも……実の母たちと同じように、ただ『よく働き、文句を言わず、都よく伝ってくれる便利な誰か』を、曇野の奥に迎え入れたいだけなのだろうか。
埼玉の実の政婦から、曇野のの政婦へ。 私の居所が変わるだけで、私の役割は、『誰かのための伝い』のままなのだろうか。
「……奈緒さん?」
私の顔が変わったことに気づいたのか、松本さんが配そうに眉をひそめた。
「あ……いえ」
私は慌てて引きつった笑顔を作り、くをげた。
「が、来ますので……今は、本当にありがとうございました」
逃げるように改札に切符を通し、私はホームへと駆けした。
背から私を呼ぶ松本さんの声が聞こえたような気がしたが、振り返ることはできなかった。
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滑り込んできた列のたいシートに座り込み、私は提げ袋をく抱きしめた。 窓の、夜の曇野のかりが、ざかっていく。
胸の奥が、たいで吹き晒されているように寒かった。
特急あずさの座席にく沈み込みながら、私は窓ガラスに額を押し当てていた。
ガタゴトと規則正しく揺れる輪の音。 夜の帳がりた甲信越のあいを、列は容赦のない速さで京方面へとり抜けていく。
膝のには、松本さんのお母さんが持たせてくれた野沢菜漬けと、ジャムの入った袋。 そのみが、今の私には鉛のようにじられた。
『奈緒さんのような方が、そばでの仕事を伝ってくれたら……本当に、いとうんです』
ホームで言われた松本さんの言葉が、の奥で何度も何度もリフレインする。
悪気のない、澄んだ瞳だった。 打算も、もない、純粋な好からの言葉だったと分かっている。
けれど。
伝い。 そのたった文字が、私の喉元に鋭い骨のように突き刺さって抜けない。
、実の台所で母に言われ続けてきた言葉。 『奈緒は気が利くから、お母さんを伝って』 『綾は勉が忙しいんだから、あんたが伝うのが当たりでしょ』 『妹なんだから、族を伝いなさい』
それはいつも「謝」の形を装いながら、実際には私のと、尊厳と、選ぶ権利をじわじわと奪い取っていく呪文だった。
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野の奥にっても、私は同じことを繰り返すのだろうか。 埼玉ので親や姉の雑用をこなしていた私が、今度は曇野ので、親戚や従業員に気を配りながら朝から晩まで果物の皮を剥き、箱を組みてるだけの「よく働く嫁」になるのだろうか。
所が変わるだけで、私の役割は、誰かのための請けのままなのだろうか。
胃の奥がたく縮みがる。 奥歯をぎゅっと噛みしめると、目がくなった。
その、のでスマートフォンがく震えた。
画面を見る。 緑のアイコンの通に、松本さんの名が表示されていた。
『奈緒さん、無事にに乗れましたでしょうか。改札でのご様子がし辛そうに見えたので、気になってご連絡しました。私の発言で、何か奈緒さんを傷つけるようなことがあったでしょうか。もしそうなら、本当に申し訳ありません』
画面の文字を見つめたまま、私は呼吸を止めた。
気づかれていた。 あのわずかな表のこわばりを、彼は見逃していなかったのだ。
実の族なら、私がどれほど青ざめていようと、どれほど俯いていようと、気にも留めなかった。 自分の求が通るか、自分の都にうか、それしか見ていなかった。
胸の奥が激しく波打つ。 ここで「なんでもありません、丈夫です」と送ることは簡単だった。
波をてず、相の嫌を損ねず、笑いでやり過ごす。