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"姉の身代わりで謝罪したら「最初からあなたをご指名です」" 第7話

リビングの空気が、凍りついた。 母が目を見張り、父が驚いたように顔をげ、姉が雑誌を取り落とした。

「……あんた、今なんて言ったの?」

「断らないって言ったの。もちろん、すぐに結婚するなんて決めてない。でも、松本さんと連絡先を交換した。これから、しずつお互いのことをっていこうって話になったから」

「ふざけんんじゃないわよ!」

母が掴みかからんばかりの勢いで詰め寄ってきた。

「親の許しもなしに、勝に話をめる気!? あんたをここまで育ててやった恩を何だとってるの! 綾だってこんなに配してくれてるのに、恩らずな娘ね!」

唾がんできそうなほどの剣幕。 以の私なら、ここで体を縮こまらせ、涙を浮かべて「ごめんなさい」と謝っていた。 波をてないことが、このでき延びる唯の恵だったから。

でも、今の私のポケットのには、松本さんから返してもらったあの成りの布袋が入っている。 拙い針目で縫われた、さな青いツバメ。 、い曇野のデスクの引きしで、切に守られていた私のさな証。

『誰かの代わりなんかじゃありませんよ』

あの喫茶で言われた言葉が、背骨を支えるようにく私を支えていた。

「私の料から毎活費を引いて、事を全部押しつけてきたのはお母さんたちでしょう。

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私はこのの具じゃない」

「な……!」

「失礼します」

私はそれ以何も言わず、自分の部へと向かった。 背から「奈緒!」「ちょっと待ちちなさいよ!」という母の絶叫が響いたが、度も振り返らなかった。

自分の部に入り、ドアの鍵を静かに閉める。 築の実の造のドアは、鍵をかけてもガチャリと頼りない音をてるだけだ。 それでも、私はまれて初めて、自分の領域を守るために鍵を回した。

壁に背をもたれかけ、そのままへとへたり込む。 膝ががくがくと震えていた。 指先がたく、奥歯がカチカチと鳴る。

怖かった。 従い続けてきた親に逆らうことが、これほど体力を削るものだとはわなかった。

その、スカートのポケットのでスマートフォンがく震えた。

恐る恐る画面を見る。 母からの着信ではない。 緑のアイコンのアプリに、通の着メッセージが届いていた。

『松本悠真』

通の文字を見た瞬、喉の奥の渇きがすっと引いていくのをじた。

恐る恐るトーク画面をく。

『無事に川越のご自宅に着かれましたでしょうか。本は突然のことで変驚かせてしまい、申し訳ありませんでした』

い、けれど丁寧な文章だった。

『曇野きの特急に乗りました。窓から見えるが、今はとても綺麗です。奈緒さんとお話しできて、本当に嬉しかったです。

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どうか今夜は、ゆっくりお休みになってください』

添えられていたのは、特急あずさの窓から撮られたとわれる、夕暮れに染まる々の写真だった。 稜線がくっきりと茜の空に浮かびがっている。

息を吸う。 胸のに、涼な信州のが吹き込んできたような気がした。

実の汚れた絨毯ので、私は震える指で返信を打った。

『無事に帰宅しました。今はおを作っていただき、本当にありがとうございました。お写真、とても綺麗ですね。松本さんも、どうかお気をつけてお帰りください』

送信ボタンを押すと、すぐに『既読』がついた。 それだけで、目がくなった。

母や姉の罵声で満ちたこのので、私の言葉をまっすぐに受け取ってくれるが、百キロれた所にいる。 その事実が、凍えそうな私のに、確かな灯を灯してくれた。

それから週、松本さんとのやり取りは、毎のように続いた。

決して派な言葉や、甘い言葉が並ぶわけではない。 朝の「おはようございます」に始まり、お昼休みに彼から送られてくるのは、で煮詰められているアンズのきな鍋の写真や、収穫が始まったばかりの信州のリンゴ畑の様子だった。

私もまた、川越の印刷会社での常をしずつ送るようになった。 「今はのカタログ用の特殊の刷りしチェックがありました」

「インクの匂いが昔から好きなんです」 そんなのないメッセージに、松本さんはいつも興そうに返信をくれた。

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