"姉の身代わりで謝罪したら「最初からあなたをご指名です」" 第3話
の朝、い取りで川越駅に向かう私の姿が、その瞬に確定した。
けれど、実の玄関をる瞬、私はいつになくえ切ったで考えていた。
――もし、この理尽な役目を果たしたら。 今度こそ、母に何を言われても、あのワンルームの賃貸契約に判を押そう。 こんな扱いに耐え続ける筋いなんて、私ののどこにもないはずだ。
そのの私は、まだらなかった。 母が投げやりに押しつけたその「厄介払い」の先に、私の過のすべてをるが待っているだなんて。
喫茶の静寂ので、松本さんが差ししたスマートフォンの画面を覗き込んだ。
液晶画面に表示されていたのは、し褪せた、焼き写真を接写した画像だった。
緑の々を背景に、いテントがいくつもち並ぶ広。 漏れが揺れるクラフトの片隅で、素朴なの陳列台のに、見覚えのある優しい笑顔が写っていた。
「……おばあちゃん……?」
私のから、掠れた声がこぼれ落ちた。
丸みを帯びた背、髪を綺麗にシニヨンにまとめ、染めのエプロンをつけて微笑んでいる女性。 に界した、私の好きな祖母・登紀子だった。
祖母は野ので、先が器用だった。 古い着物を解いて巾着や布物を縫うのが得で、私が子どもの頃、休みになると決まって野の祖母のに預けられていた。
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母や姉から「」「どんくさい」と否定され続けていた私を、祖母だけはいつも温かいで抱きしめてくれた。
『奈緒の縫い目は、本当に丁寧で優しいねぇ。誰かをいながら針を刺しているのが、おばあちゃんにはよく分かるよ』
そう言って、祖母はいつも私と緒にミシンを踏んでくれたのだ。
写真のには、代半ばの、しぎこちない笑顔を浮かべた松本さんの姿もあった。 そして、そのテントの片隅――陳列棚ので、膝を擦りむいて泣いている見らぬさな女の子に、絆創膏を貼りながら靴紐を結び直してあげている、ポニーテールの若い娘のろ姿。
褪せた半袖のボーダーシャツ。 違いなく、歳の頃の私だった。
「あの頃、私は京の学をて、業のを継ぐために昙野に戻ってきたばかりでした」
松本さんは、懐かしそうに目を細めて語り始めた。
「父が倒れて急に経営を引き継ぐことになり、もも分からなくて。作りのアンズやイチゴのジャムをクラフトに持っていったものの、瓶の並べ方も、接客も、何もかもが空回りしていました。そんな、隣のブースで布物を売っていたお祖母様が、声をかけてくださったんです」
『若いが懸命作ったものなんだから、もっと自信をお持ちなさい。包装がし素っ気ないから、私の作った端切れの袋をかぶせてあげようかね』
祖母はそう言って、松本さんのジャム瓶に、作りのさな巾着袋を被せてリボンを結んでくれたのだという。
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「お祖母様が助けてくださったおかげで、その、私たちのジャムは初めて完売しました。そして……」
松本さんは瞬言葉を切り、私の目をまっすぐに見つめた。
「お祖母様が忙しくなった、あなたがって両替にってくれたり、迷子になった所の子をずっとあやして、親御さんが見つかるまで付き添っていた姿を、私はずっと見ていました。自分のことは回しにして、誰かのために汗を流して、最には靴までまみれにして笑っていた……あののあなたの横顔が、ずっと胸に残っていたんです」
臓が、どくりときくねた。
もの、たったの来事。 私にとっては、好きな祖母と過ごした、数ある穏やかなのコマに過ぎなかった。 族の誰も気に留めず、褒めてもくれなかった私の常の振るいを、このは、そんな昔から見ていたというのだろうか。
「でも、どうして今になって……」
私の震える問いに、松本さんは鞄のから、丁寧に使い込まれた革の財布を取りし、そのからさらに「あるもの」を取りした。
テーブルのに、静かに置かれたのひらサイズの布袋。
それは、成りの綿に、さな青いツバメの刺繍が施された巾着袋だった。 何度も洗われたのか、は柔らかく毛羽ち、ツバメの青い糸はし褪せている。