"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第14話
「まず、財産分与。産の売却益だけでなく、婚姻期に形成されたご主の名義の預貯、株式、積保険の解約返戻、そして何より『退職見込額』の清算が含まれていません」
「退職も……対象になるんですか?」
「当然です。定までを切っており、企業勤務で支される蓋然性が極めてい、婚姻期に相当する数分は夫婦の共財産として分与の対象になります。ざっと試算しても、数百万円の請求権があなたにあります」
先の淡々とした調が、どれほどかったか。
「そして分割。これは分割として請求しますが、ご主が拒否しても、調や審判に移すればほぼ確実に〇・(割)の按分割が認められます。ご主がどれだけゴネようと、法の続きに乗せれば逃げはありません」
先は類をえ、私をまっすぐに見つめた。
「川さん。交渉はすべて私の方で代理として引き受けますか? それとも、まずはご自でこの現実を突きつけてみますか?」
私はしだけ考えた。
夫のあの歪んだ顔。 もの、私を見し、私のを貪り、最にはゴミのように放りそうとした男。
のを借りて背から撃つのではなく、私自の言葉で、そのに引導を渡したかった。
「……まずは、自分で話します。
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どうしても話が通じないときは、先に受任通を送っていただきます」
「分かりました」
先は頼もしげに頷き、クリアファイルにまとめられた『適正な財産分与および分割に関する請求試算』を渡してくれた。
「丈夫ですよ、川さん。あなたはもう、怯える側ではありません」
そのの午、私はしい職となる文化センターから駅ほどれた、武野田線沿線のさな産にいた。
「川様、こちらの物件はいかがでしょう」
案内されたのは、築の造アパートの階角部。 取りは、畳のにさなキッチンスペースがついた、いわゆる1DKだった。
ドアをけると、午の柔らかながフローリングのに真っな角を描いていた。
狭い。 暮らした、あのLDKの戸建てに比べれば、息が詰まるほど狭かった。 クローゼットもさく、キッチンもコンロのコンパクトなもの。
けれど、部のを漂う空気には、あの特の息苦しさが微もなかった。
誰の嫌を窺う必もない。 誰の脱ぎ捨てた靴にため息をつくことも、階段をりてくる音に臓をねさせることもない。
「……当たりが、いいですね」
私の呟きに、案内してくれた配の産の主が嬉しそうに目を細めた。
「ええ、向きですからね。
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の通りも静かですし、スーパーも歩いて分ですよ。審査にはしおをいただきますが、公団体の内定通がお元にあれば、分に通るといます」
私は窓辺にち、さくけた窓からの空気を吸い込んだ。
たい、けれど澄み切ったの。 ここで、私は私のをやり直すのだ。
具は、何ひとつ持参しなくていい。 あのにあるものは、すべて過の残骸だ。 さな物のテーブルと、煎餅布団が枚あれば、それで分だった。
その方で、自宅の崩壊は目に見えるスピードで加速していた。
私が事を完全に放棄して、週。
かつて磨きげられていたリビングは、見るもなく荒れ果てていた。 ローテーブルのには、コンビニのチキンをべ終えたプラスチック容器や、空になったビールのアルミ缶が乱雑に放置され、異臭を放っている。
シンクには、夫が使ったとわれるマグカップやスプーンが、も張られずに放置されて茶渋のこびりついたまま配になっていた。
脱所のには、裏返しに脱ぎ捨てられた靴と、異臭を放つ肌着が散乱している。 夫は度、自分で洗濯を回そうとしたらしいが、洗剤の量を違えて泡だらけにした、柔剤の投入を壊したらしく、それ以来、洗濯に触れることすら諦めたようだった。
そして、夫自のなりも、急速に汚れていった。
襟元の皮脂汚れが落ちていないワイシャツ。 シワだらけのスラックス。