"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第13話
解体費用だけで百万く消えるのよ」
夫の膝が、目に見えてガクガクと震え始めた。
のでい描いていた「を売って得たで、都の綺麗な賃貸マンションを借り、悠々自適に暮らすシングルライフ」の青写真が、っ端微に砕け散る音が聞こえるようだった。
「残った百万円と、毎削られる。それに、役職定を迎えれば、あなたの基本は来から割カットよね」
私は子にく腰掛け直し、え切った目で夫を見げた。
「それが、あなたが選ぼうとしている『自由』の正体よ。川さん。それでもまだ、このに今すぐサインしろとおっしゃるの?」
夫は何も言い返せなかった。
唇を刻みに震わせ、腹を押さえたまま、ただ机のの類を凝している。 額からは油汗がポタポタと落ち、フローリングのに染みを作っていた。
「……薬は」
絞りすような、か細い声だった。
「胃薬、本当に……ないのか」
「ドラッグストアなら、駅で夜までいてますよ。歩いて分ですから、どうぞご自分で」
夫はよろめく取りで部をてった。 階段をりる音には、かつての威圧など微も残っていなかった。
廊の軋む音を聞きながら、私は静かに呼吸をした。 胸の奥で、張り詰めていたい鎖が、音をててれていくのをじていた。
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週。 郵便受けのに、待ち望んでいた通の角2封筒が届いていた。
差は、公益財団法〇〇文化振興事業団。
たいが吹き抜ける玄関先で、私はハサミも使わず、震える指先で封筒の端を破いた。 からてきたつ折りの。
その央に、くっきりと印字された文字がび込んできた。
『採用内定通』
川子様。 貴殿を、当事業団の契約職員(総務・施設管理担当)として採用内定いたしましたので通いたします——。
界が、瞬で歪んだ。 文字が滲んで、読めなくなる。
声をして泣きそうになるのを、必で奥歯を噛み締めて堪えた。
万千円。 賞与回。社会保険完備。 決して、企業の総職のようなではない。 けれど、それは紛れもなく、誰の扶養でもなく、私というが社会から必とされ、自分のできていくための「切符」だった。
私はすぐにスマートフォンを取りし、震える指で奈美にメッセージを送った。
『受かったよ』
送信ボタンを押して、わずか秒。 スマートフォンの画面が激しく震えた。
「お母さん!!!」
通話ボタンを押した瞬、鼓膜が破れそうなほどの娘の歓声が響いた。
「やった!! やったじゃんお母さん!! 嘘でしょ、本当に決まったの!?」
「うん……さっき、通が届いて……」
「信じられない! 歳で、ブランクあって、発で契約社員の内定取るなんて凄すぎるよ! 私、泣きそうなんだけど!」
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話の向こうで、奈美が本当にをすする音が聞こえた。 その温かさが、張り詰めていた私のをじんわりと溶かしていく。
「お母さん、これでスタートラインにてたね」
「うん。奈美が背を押してくれたおかげよ。本当にありがとう」
「お礼なんていいよ。……で、これからどうする? 弁護士のところ、くんでしょ?」
「ええ。内定通を持って、今これからってくるわ」
宮駅から徒歩分。 雑居ビルの階にある法律事務所のドアを叩いた。
迎えてくれたのは、本の細いフレームの鏡をかけた、代半ばの女性弁護士——先だった。 恵理が「婚問題で女性側の経済自を支援させたら、この界隈で番頼りになる」と紹介してくれた物だった。
「おめでとうございます、川さん」
弁護士は、私が差しした内定通を瞥し、力く微笑んだ。
「これで、経済な自の目処がちましたね。裁判所や調委員は、婚の活基盤がっているかどうかを非常にします。あなたが契約社員として定期収入を得られるという事実は、今のあらゆる交渉において力な武器になりますよ」
先は元のノートパソコンをき、際よく数値を入力していった。
「さて、ご主から提示された『協議事項案』ですが、典型なモラハラ型の買い叩きですね」
先のペン先が、夫の作った類の各項目を酷に突いた。