"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第11話
臓が、ねがった。 先週、恵理のアドバイスをもとに必で職務経歴をき直して応募した、の郭団体が運営する文化施設の事務スタッフ(契約社員)の募集だった。
『類選考の結果、ぜひ川様に次面接にお越しいただきたく、ご連絡差しげました』
の奥で、カチリと何かが噛みう音がした。
落選続きの暗のに、初めて差し込んだ、本の細い。
「……ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
通話案内をメモする私の声は、震えていなかった。 話を切り、顔をげると、亮が呆然とした表で私を見つめていた。
「……面接?」
「そうよ。仕事の面接」
私は帳をき、指定された面接のをペンでき込んだ。 族の予定ではない。 私の、私だけのための予定。
「お母さん、もう自分のを始めるから」
亮は何も言えず、ただち尽くしていた。
面接のまでの数、私は狂ったように準備をめた。
恵理と夜にオンラインで模擬面接を繰り返し、施設の事業報告を読み込み、志望を自分の言葉で練り直した。 のスーツはさすがに入らなかったため、奈美が「投資だから」と送ってくれたし落ち着いたネイビーのセットアップにを包んだ。
面接当。 会となった文化センターの会議には、の面接官が座っていた。
広告
央の初老の男性面接官が、私の履歴に目を落としながらをいた。
「川さん。経歴を拝見しますと、正社員としてのお勤めは以に退職されて以、直は公民館でのパート勤務がですね。正直に申しげますが、今回の募集は契約社員とはいえ、政との折衝や予算管理など、責任のい業務がくなります。フルタイムでの復帰に、はありませんか?」
圧迫するような問いかけ。 以の私なら、萎縮して「ご迷惑をおかけしないよう頑張ります」と曖昧に笑っていただろう。
けれど、今の私には、退がなかった。
「はありません」
私は背筋を伸ばし、面接官の目をまっすぐに見据えて答えた。
「公民館での、私は単なる受付業務に留まらず、数件に及ぶ域団体の予算執状況の精査や、利用規則を巡るトラブルの調を担当してまいりました。限られた員と予算ので、政のルールを遵守しながら現を円滑に回す難しさは、をもって理解しております。庭の事によるブランクはございますが、そこで培った対折衝力と、現を支え続ける粘りさは、貴団体の業務において必ず貢献できると確信しております」
面接官のひとりが、さく頷き、元の類に何かをき留めた。 応えはあった。
広告
けれど、結果がるまでは分からない。
帰りのの、私は疲労とともに、言いようのない揚に包まれていた。 誰かの妻としてではなく、誰かの母としてでもなく、私自の言葉で、社会と対峙した。 その事実だけで、背筋がすっと伸びるような気がした。
そのの夜過ぎ。
はたいがり始めていた。 私は階の元・子供部(今は私の寝兼斎にしている部)で、ノートパソコンの画面を見つめていた。
数に、事務所から届いた親展の封筒。 そこに入っていた『分割のための報通』を、恵理から教えてもらったシミュレーションサイトに入力し、数字を弾きしていた。
画面に表示された試算結果を見て、私は静かに息を呑んだ。
夫が、メーカーで管理職として積みげてきた。 その婚姻期の記録を対で分割した——私が将来受け取れる額は、現の国民の基礎部分に加えて、毎数万円単位で乗せされる。 逆に、夫が定に受け取るはずだったは、その分だけ恒久に削り取られることになるのだ。
さらに、法務局で取った登記事項証と、現の隣の産相を突きわせたシート。 諸経費と宅ローンの残債を清算すれば、夫の元に残る現など、せいぜい数百万円程度。
とても「悠々自適の気楽な暮らし」を支えられる額ではなかった。
あのは、本当に何も分かっていないのだ。