"四十八歳、二十五年の家事を「無職」と呼ぶ夫へ" 第5話
「私……」
喉の奥から、震える声が漏れた。
「私、もう度、ちゃんと働きたい。誰かの都にわせてシフトを削られるんじゃなくて、自分のでって、社会ので自分の所を作りたい」
歳。 履歴をけば、空期ばかりが目つ齢。 それでも、このまま「おのはパート止まりだ」と嘲笑われたまま終わりたくなかった。
奈美は、私の言葉を聞いて、ふっと柔らかく微笑んだ。
「うん。ってた。お母さん、昔の仕事の話をするときだけ、すごく楽しそうな顔をしてたもん」
奈美はバッグからスマートフォンを取りした。
「やってみなよ、お母さん。正社員でも、契約社員でも、とにかく探してみなよ。ダメ元でいいじゃん。世が厳しいのは当たりだよ。でも、最初から諦めてお父さんの言う通りにするのだけは、絶対に嫌」
「……受かるかしら。パソコンだって、今のオフィスで使われてるシステムなんて、私……」
「丈夫。私が教える。履歴のき方も、自己PRの作り方も、全部伝うから。お母さんはただの主婦じゃないよ。公民館で、ややこしい利用者のクレーム対応も、イベントの予算管理も、全部ひとりで回してたじゃない。あれ、派なスキルだからね」
娘の力い言葉に、私の界が涙で滲んだ。
の私のは、完全に無駄だったわけではない。 なくとも、目のにいるこの娘は、私の背をちゃんと見ていてくれたのだ。
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奈美が夕方ので京へ戻るのを見送るため、私は駅の改札まで付き添った。
「お母さん、まずは職探しね。あと、お父さんのあのには絶対にサインしちゃダメだよ。の権利関係とかのこととか、ちゃんと調べなきゃいけないんだから」
「わかってる。ありがとう、奈美」
がホームをれていくのを見届け、私はえ込んできた夕暮れの宅を、ひとり歩いて自宅へと向かった。
たいが頬を打つ。 けれど、のには議な静けさと、さな決が灯っていた。
、かつての同僚で、今も都内の商社で総務のリーダーをしている恵理に連絡を取ってみよう。 今の企業の事務職がどんなスキルを求めているのか、現のリアルな話を聞いてみよう。
歳からの再発。 茨のであることは百も承だ。 それでも、夫に敷かれた「見捨てられた妻」というレールのを、しく歩く気は毛なかった。
自宅の角を曲がった。 築のがが見えてくる。
壁はし褪せ、根の樋には落ち葉が詰まっているけれど、私が通い続け、毎雑巾をかけ、庭の雑を抜いて守ってきただ。
だが、扉のに見慣れない黒塗りのセダンがまっているのが目に入った。
……誰だろう。 夫のではない。夫は今、休勤のはずだ。
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審にいながら歩調を速めると、玄関先から、パリッとした濃紺のスーツを着た代半ばほどの男性が歩みてきた。 にはみのあるバインダーと、レーザー距計のような械を持っている。
男性は私に気づくと、当たりの良さそうな営業スマイルを浮かべ、々とをげた。
「あ、恐れ入ります。川様のお宅でいらっしゃいますでしょうか?」
「……はい、そうですが。どちら様ですか?」
警戒しながら尋ねると、男性は胸ポケットから際よく名刺入れを取りし、両で枚の名刺を差ししてきた。
産仲介会社のロゴが、夕暮れのので鮮に浮かびがっていた。
「突然の訪問、変失礼いたしました。私、〇〇産の宮支で営業を担当しております、と申します」
「産……?」
嫌な予が、背筋を駆けがった。 指先が急速にたくなっていく。
と名乗った営業マンは、バインダーに挟まれた図面をチラリと確認しながら、何でもない事務連絡のように言った。
「はい。ご主の、川雅様からウェブ経由でご売却の訪問査定依頼をいただきまして。本は観の確認と、敷境界の事確認にお伺いした次第です。ご主からは『妻にも話は通してあるので、現を見ておいてくれ』とうかがっていたのですが……」
言葉が、の奥で反響した。
——妻にも話は通してある。
昨の今だ。 あの協議事項のを突きつけてから、まだ丸も経っていない。