"父親になりたくないなんて、一度も言ってない" 第7話
「うん。颯太くん、会ったよりずっと喋るようになってたな。子どもの成って、いんだな」
「悠介、すごく面倒見がいいのね。びっくりした」 「そうかな。ブロックなんて、子どもの頃以来だったよ」
夫は懐かしそうに微笑んだ。 それから、ふといしたように私の顔を覗き込んだ。
「奈美、疲れただろ。混み、苦なのに付きわせちゃって悪かったな」
どこまでも私を気遣う言葉。 責めるなど微もない、完璧な優しさ。
――本当は、羨ましかったんでしょ? ――自分の子どもであんなふうに遊びたかったって、胸が張り裂けそうだったんでしょ?
喉元までかかった問いを、奥歯を噛みしめてみ込んだ。 聞けるはずがなかった。 「そうだ」と答えられたら、私はそので崩れ落ちてしまう。 の轟音が、のの沈黙を無慈に埋めていった。
翌週の曜、私たちは保ヶにある夫の実を訪れていた。 義母とで、リビングのこたつを囲んで夕飯をべるためだった。
義父がくなってから、義母は軒で暮らしをしている。 昔から控えめで、嫁の私に対しても定の距を保ってくれるだった。 けれど、結婚して目、目と経つにつれ、帰省のたびに義母のから漏れる言葉が荷になっていた。
『ご所の〇〇さん、お孫さんがまれたんですって』 『で暮らすのも気楽でいいけれど、やっぱり子どもがいるとがるくなるわよね』
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悪気がないのは分かっていた。 ただ、その何気ない世話が、私にとっては「く産みなさい」という無言の圧力にじられて、このに来るのがずっと怖かった。
今も何か言われるのではないか。 先、夫が「できていく」と決めたことを、義母はっているのだろうか。 緊張で胃のあたりがきりきりと痛んでいた。
けれど、事が始まっても、義母は子どもの話題を切にしなかった。 所のスーパーの改装の話、庭の犀の話、夫の仕事の忙しさ。 当たり障りのない会話だけが続き、やがて卓が片付いた。
「悠介、悪いんだけど、駅のドラッグストアで湿布買ってきてくれないかい? 買い置き切らしちゃって」 義母がお札を差しすと、夫は「いいよ、ついでにアイスでも買ってくる」と着を羽織って玄関へ向かった。
ガチャリとドアが閉まる音が響く。 部のに、私と義母のだけが残された。
「お義母さん、お茶、淹れ直しますね」 ちがろうとした私の腕を、義母のがそっと止めた。 乾いた、節くれだった温かいだった。
「いいのよ、奈美さん。し座って」
義母は湯呑みを両で包み込み、湯気の向こうから私をじっと見つめた。 その目には、いつもの世話をするのような軽さはなかった。
「……奈美さん。最、はうまくいってる?」
臓がねた。
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呼吸をえながら、努めて平然とした声を絞りす。 「はい。きな喧嘩もしていませんし、仲良くやっています」
「そう」 義母はく息を吐き、線を落とした。
「先週ね、悠介がでここに来たのよ」
背筋が、すっとたくなった。 夫がで実に来ていたなんて、何も聞いていなかった。
「仕事帰りにふらっと寄ってね。夕飯もべずに、あの座布団のところで、ずっとを向いて座ってたわ」
義母の声はく、静かだった。
「あの子、私に言ったのよ。『母さん、もう奈美に子どもの話はしないでくれ』って。『俺たち、だけできていくって決めたから。奈美をこれ以苦しめたくないんだ』って」
指先がたく張っていく。 夫は、私のらないところで、で親の元へき、防波堤になってくれていたのだ。 私のに義母の催促が届かないよう、先回りして釘を刺していた。
「……お義母さん、私」 「責めるつもりはないのよ」
義母は静かに首を横に振った。
「奈美さんには奈美さんのき方がある。仕事も懸命やってるし、派だとうわ。今の代、子どもを持たない選択をする夫婦がたくさんいることもってる。だから私、もうあなたに孫の顔が見たいなんて度と言わない」
義母の言葉には、嘘も嫌もなかった。 私の選択を、理屈として受け入れてくれようとしているのが分かった。
かつて私が番欲しかった、周囲からの「理解」