"「いなくても回る」と言われた私に、12件の着信" 第18話
私が、のに叩き込んできた膨なノウハウを、全ページに及ぶ詳細なマニュアルに落とし込んだ。 誰が読んでも順通りにめれば業務が回るよう、画面のキャプチャを貼り、例処理の連絡先をすべて記した。
完成したファイルを社内サーバーの最位フォルダに格納し、印刷した分いファイルをさんと島さん、そしてあののデスクへ届けた。
「これで、私の持っているすべての業務識の引き継ぎを完といたします」
あのはデスクに置かれた分いファイルを、まるで爆弾でも見るような怯えた目で見つめていた。 文字通り、逃げは完全に塞がれたのだ。 「引き継ぎが分だった」という言い訳は、もう度と通用しない。
退職の。 社に再び呼びされた。
応接セットに座る社は、この週で歳は老け込んだように見えた。 目のには赤黒い隈ができ、髪が気に増えている。 ベルクの本部へ連通い詰め、平で謝罪したものの、ペナルティとして来期の取引枠を幅に削減されたらしい。
「佐藤さん」 社の声は、掠れてかった。
「……退職だがね。就業規則、自己都退職のは基本支額の割カットとなっている。それに、君の突然の退職によって会社が被った損害を考慮し、さらに減額することもあり得る」
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最の掻き。 で嫌がらせをして、しでも私のを折ろうという魂胆だった。
私はじることなく、持参したクリアファイルから枚の類を取りした。
「埼玉労働局の総労働相談コーナー、および顧問社会保険労務士の先に事確認を取っております」
テーブルのに置かれたのは、労務相談の記録シートだった。
「私の退職は、就業規則に定められた予告期を満たしており、適法な続きです。また、過分のタイムカードの打刻データ、およびシステムのログイン履歴のコピーがここにございます」
社がピクッと肩を震わせた。
「の未払い残業代は、概算で百万円を超えます。さらに、先の賞期限改ざん指示の音声データ、ならびに社が線を引いた荷指示の現物コピーも保管しております。もし退職の当な減額、あるいは職票の交付遅延等の嫌がらせがわれた、即座に労働基準監督署へ正申告をい、未払い賃の支払い請求訴訟を起こします」
「き……貴様、そこまで……!」 社の指先が、ガタガタと震えした。
「穏便に終わらせたいのであれば、規定通りの退職を期までに私の座へお振り込みください。職票も、退職以内に郵送願います。失礼いたします」
社は、もう言も発することができなかった。
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机のに置かれた証拠の束をに、ただ項垂れ、脂汗を垂らすことしかできなかった。
会社を私物化し、力でを支配してきた男の、あまりにも惨めで脆い結末だった。
、曜。 私の最終社。
分。 複の横の、使ったデスクの引きしをすべて空にした。 私物は袋つに収まる程度しかなかった。
机のをアルコールシートで拭きげる。 トナーの焦げた臭いも、排気のぬるいも、今で永にお別れだ。
「佐藤さん」 フロアの奥から、さんが歩み寄ってきた。 その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。 渡されたのは、さな束とお菓子の包み。
「さん……」
「これ、私と倉庫のみんなから。……本当に、今までありがとうね。佐藤さんがいてくれたから、現がどれだけ救われてきたか。いなくなるのは本当に寂しいけれど……でも、これでよかったのよ。あなたには、もっと相応しい所があるはずだから」
さんの温かい言葉に、張り詰めていた胸の奥がじんわりと緩んだ。 振り向くと、事務所の入りのところで、作業着姿の島さんがヘルメットを脱いでっていた。 私と目がうと、島さんは器用に片を挙げ、く、くをげた。
現のは、分かってくれていた。 誰が汗を流し、誰が逃げ回っていたのかを。
それだけで、私のは決して無駄ではなかったとえた。
社は、社のドアを閉め切ったままてこなかった。