"「いなくても回る」と言われた私に、12件の着信" 第17話
どうぞ、からでもしいパートさんを雇ってください。私がいなくても、この部署は普通に回るそうですから」
「き、貴様……!」
社が拳を振りげようとした、そのだった。
ノックもなしに、社のドアが勢いよくいた。
「お、お義父様……!」
び込んできたのは、あのだった。 フロアに響き渡った鳴り声を聞きつけてやってきたのだろう。 だが、テーブルのに置かれたい封筒の文字を見た瞬、あののがピタリと止まった。
「……え? 退職……届?」
あのの瞳が、信じられないものを見るように激しく揺れた。 顔から血の気がサーッと引いていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ……! 佐藤さん、辞めるってどういうこと!? 今のベルクの件はどうするの!? からの発注データ、誰が確認するのよ!?」
鳴のような声だった。 数、湯で私にすがりついてきたのあの醜い表が、再びその顔に張り付いていた。
私はちがり、バッグを肩にかけ直した。
「副主任。退職までの週、私は法律に則り、所定の業務と引き継ぎを淡々といます。ですが、ベルク様への謝罪に同することもお断りしますし、あなたの業務を裏で代することも度といたしません」
「な、なんでよ!? 課にしてあげるってお義父様が言ったでしょ!? お料もがるのに、何が満なのよ!?」
「私のと尊厳は、万円で買い叩けるほどくありません」
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それだけを言い残し、私はに向かって形式通りの礼をした。 背で「待て! 佐藤! おい!」と社が叫ぶ声がしたが、私は度も振り返らずに社のドアノブを回した。
フロアにると、数の社員たちが斉に息を呑んで私を見つめていた。 誰も何も言わなかった。 だが、その線のに、私を非難するはつもなかった。
複の横の、私の机。 今から、ここでの最のカウントダウンが始まる。
そこからの週は、あるで奇妙なだった。
社は最初の、私を完全に無することで制裁を加えようとした。 社内回覧の類を私の席だけばし、朝のミーティングでも私のをないものとして扱った。 だが、そんな嫌がらせなど、痛くも痒くもなかった。
困り果てたのは、無を決め込もうとした経営陣の方だった。
私が定の半になると、分の狂いもなくタイムカードを押し、デスクを綺麗に片付けて帰宅するようになったからだ。 残業は切しない。 休の社用携帯は、曜の終業と同に源を落とし、デスクの引きしに鍵をかけて保管した。
夜の問いわせも、休の緊急トラブルも、すべて「営業部副主任」のデスクへと転送される。
「佐藤さん! 夕方に入ったの追加注文、のラインが『急には受けられない』って突っぱねてきたんだけど、どうすればいいの!?」
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退勤の支度をする私に、あのが半狂乱で詰め寄ってくる。
「島さんへ連絡し、の夜シフトの余力を確認したで、翌朝納品へのスライドを交渉してください。順はマニュアルのページに記載してあります」
「そんなの読んでるないのよ! 今すぐあなたが島さんに話してよ!」
「定ですので、失礼いたします」
「待ちなさいよ! ちょっと、佐藤さん!!」
背からんでくるヒステリックな叫び声を、私はとともに背に受け流した。 駅へと向かう取りは、信じられないほど軽かった。
夕方のスーパーに寄り、鮮な野菜と芽の好きなハンバーグの材料を買う。 学童保育へ迎えにくと、芽が「ママ!」と満面の笑顔で駆け寄ってきた。 「今ね、図でね、おの絵を描いたんだよ!」 「見せて見せて。すごくに描けたね」
娘のを握りしめて歩く、夕暮れの帰り。 ポケットののスマートフォンが震えることは、もう度とない。 ただそれだけのことが、胸の奥をじんわりと温かく満たしていった。
会社では、残されたのすべてを「引き継ぎの作成」に注ぎ込んだ。 悪やあてつけで現を破綻させるつもりは毛なかった。 それは私のプロフェッショナリズムが許さなかった。
顧客ごとの納品、トラックの入ルートの特殊制限、チルド商品の許容温度帯、欠品の代替品リスト。