"「いなくても回る」と言われた私に、12件の着信" 第13話
え切った声が、自分でも驚くほど静かに湯に響いた。
「業務の責任は、権限を持つが負うべきです。それが組織のルールです。失礼いたします」
私は度と振り返らず、湯のドアをけてフロアへと戻った。 背で「佐藤さん! 佐藤さん……!」と呼ぶ声がしたが、私のが止まることはなかった。
翌の曜。 私はで戦うことをやめた。
朝の始業、会議にのが集まっていた。 私、ベテラン事務員のさん、そして倉庫責任者の島さん。
テーブルのに置かれたのは、数ページに及ぶホチキス留めの類。 表には、黒いゴシック体でこう印字されていた。
『営業事務および荷管理体制の適正化に関する業務改善求』
「由さん、これ……本当にすのかい?」 島さんが、神妙な面持ちで類を見つめた。
「はい。このままでは、現が犯罪に巻き込まれます。先のセンターの件も、役所の監査が入れば発でアウトです。その、現の責任にされて切り捨てられるのは島さんたちです」
さんも、く頷いた。 「私も署名したわ。佐藤さんがで矢面につ必はない。私たち全員の問題よ。副主任のいつきで現を引っ掻き回されるのは、もう限界」
類には、の署名と実印が押されていた。 求項目は極めて真っ当なものだった。
広告
、未検証のクラウドシステムの即運用止、および基幹システムへの本化。 、荷データの承認プロセスの確化(営業事務員への責任転嫁の禁止)。 、品表示法に基づく賞期限管理ルールの厳格な遵守。 、現担当者の業務範囲の確化と、バックアップ体制の確。
「これを、今の夕方、社に提します」
島さんがフッとく笑い、分いで自分の膝を叩いた。 「分かった。俺も腹括るわ。由さんだけにを被らせてたまるかよ」
そのの。 私たちはで社のドアをノックした。
部のから「入れ」と々しい声がする。 ドアをけると、きな革張りのデスクに社がふんぞり返っていた。 横のソファには、目を腫らしたあのが、さくなって座っている。
「何の用だ、揃って」 社は嫌そうに葉巻の煙を皿に押し付けた。
私は無言のまま歩み寄り、デスクの央に『業務改善求』を静かに置いた。
社は眉をひそめ、パラパラとページをめくった。 読みめるにつれて、その顔がみるみるうちに赤黒く染まっていく。 こめかみの血管がピクピクとねがった。
バアンッ!!
類が、デスクのに叩きつけられた。
「……ふざけるのもいい加減にしろ!」
社の鳴り声が、社の窓ガラスを震わせた。
「業務改善求だと!? 従業員の分際で、経営方針にケチをつける気か! これは会社に対する反逆だぞ!」
広告
「反逆ではありません」 私は歩も引かずに答えた。 「品会社としての最限の全を守るための、現からの切実な提言です」
「黙れ!」 社はちがり、デスク越しに私を指差した。
「しいシステムを導入して業務を効率化するのは、経営陣の正当な権利だ! それを古いやり方にしがみついてサボタージュするとは何事だ! 島、、おたちも佐藤のに乗せられおって……!」
「社」 島さんがにた。 「サボタージュじゃありません。昨だって、賞期限の印字ミスで役所から厳注が来たばかりでしょうが。このままじゃ、うちのタレで事故が起きます」
「事故など起きておらん! 現に納品は完したんだ!」 社は唾をばしながら喚き散らした。
そして、その濁った線が、再び私に向けられた。 、この会社を私物化し、ワンマンで支配してきた男の、傲そのものの目だった。
「佐藤。おがこの首謀者だな」
「首謀者などという言葉は当たりません。現の総です」
「いいか、よく聞け」 社は声をく落とし、脅しつけるように言った。
「企業には企業のやり方があるんだよ。企業みたいな面倒な続きばかり持ち込んで、会社のを引っ張るような社員はうちにはいらん。経営方針に従うか、それとも今すぐ自分ので会社をるか――つにつだ」
最通告。 、をにして働いてきた社員に対する言葉が、それだった。