みかん小説
本棚

"「いなくても回る」と言われた私に、12件の着信" 第10話

息が止まりそうだった。

「今だって……『くお迎えくからね』って言ったのに、来なかった。学童の先が『お母さんお仕事だから待とうね』って……。私がおしたり、学のお見せようとすると、ママいつも『ちょっと待って』って言う」

芽のさな肩が、ヒックヒックと激しくし始めた。

「会社の話が鳴ると、ママすぐに『はい!』ってっていくのに……私の『ママ見て』は、いっつも回しにする。……私、邪魔なんでしょ? 私がいるから、ママ会社でられるんでしょ?」

「芽……!」

私は膝から崩れ落ちるようにして、娘のさな体を力いっぱい抱きしめた。 「違う、違うよ芽! そんなこと絶対にない! 芽はママの宝物だよ、邪魔なわけないじゃない!」

抱きしめた娘の体は、驚くほど軽くて、温かかった。 。 私は何を守るために、あの理尽に耐えてきたのだろう。

会社のため? キャリアのため? 違う。この子と、この子の笑顔を守るためだったはずだ。

それなのに、私はいつのにか、会社から投げつけられる理尽な責任を処理することに忙殺され、番守るべきこの子のを置きりにしていた。

「ごめんね……ごめんね、芽……」 涙が止まらなかった。 娘のパジャマの背を濡らしながら、私は何度も、何度も謝り続けた。

芽が泣き疲れて眠りについたのは、付が変わるだった。

広告

寝のベッドに娘を横たえ、乱れた髪を優しく撫でる。 静かな寝息を聞きながら、私はリビングへ戻った。

テーブルのに置かれたスマートフォン。 画面を見ると、会社のグループチャットに、あのからのメッセージが何通も入っていた。

『朝イチで、システムの入力備リストを全員分まとめておいてください』 『誰のせいでこんなに遅れがてるのか、社に報告しなきゃいけないので』

夜の零を回っている。 以の私なら、「分かりました」と返信し、今から自宅のパソコンをいて未まで作業していただろう。

私は、メッセージを既読にすらつけなかった。 通を切り、スマホを裏返して机に置いた。

もう、いい。 もう、分だ。

私は、会社を支えてきたつもりだった。 けれど実際は、会社が制度の備や内の甘えを放置するための「都のいい緩衝材」にされていただけだった。 私がを被れば被るほど、あのたちは調子に乗り、会社は腐敗していく。 そしてその代償を、私の娘が支払わされていた。

パソコンをいた。 ちげたのは、会社の業務システムではない。

転職エージェントの登録サイトだった。

職務経歴の欄に、文字を打ち込んでいく。 『品卸売業における営業事務・受発注管理:』 『基幹システムの運用設計、庫管理、物流配送ルートの最適化』 『品質管理基準(HACCP、品表示法)に基づく荷判定実務』

キーボードを叩くうちに、涙はすっかり乾いていた。

広告

私には、積みげてきたものがある。 あのが「誰にでもできる単純作業」と見した仕事のに、どれだけの専識と現の汗が詰まっていたか。 それを正当に評価してくれる所へ、私は娘のを引いて歩きさなければならない。

履歴のアップロードボタンを押した。 画面に『登録が完しました』の文字が表示された瞬、リビングのドアが静かにいた。

「ただいま……」

作業着姿の夫、拓也だった。 距運の疲れで、目のにい隈ができている。 私のにち、パソコンの画面と、私の乾いた目元を交互に見つめた。

「……由、起きてたのか」

「おかえり、拓也」

拓也は荷物を置き、私の向かいの子に静かに腰掛けた。 「芽は?」

「さっき、泣き疲れて寝たところ」

私は隠すことなく、今会社で起きたこと、芽に言われた言葉、そして自分が転職サイトに登録したことを、淡々と話した。 途で声が震えそうになったが、最まで逃げずに言葉にした。

拓也は黙って私の話を聞いていた。 そして、きな両で顔を覆い、く、いため息をついた。

「……悪かった」

く、掠れた声だった。

「俺、トラックの運があるからって、おに全部押し付けてた。『仕事が忙しい』を言い訳にして、芽のことも、おの会社のことも、全部おに背負わせてた」

「拓也のせいじゃないよ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: